足のトラブルは“万病のもと”。軽視すると将来は寝たきりにも
形成外科医の飯村剛史 先生湘南鎌倉総合病院では、全国に先駆けて「足外来」と「フットケア外来」を設置し、足のトラブルに悩む患者の治療やケアに対応してきました。
2011年には「フットウェア外来」を新設し、医師、看護師、義肢装具士の連携をより強化した「フット外来」へと診療体制を進化させました。このように総合的かつ専門的な視点から足の健康にアプローチする施設は少ないのが実情です。
「欧米では小さな町にも“足病医(Podiatrist)”と呼ばれる足のトラブルを専門に診療する医師がいて、足の健康で困り事があれば何でも相談できる仕組みがあります」とフット外来の責任者である小林修三先生は説明します。
日本でも子どもから高齢者まであらゆる世代の人が何らかの足のトラブルを抱えていますが、治療やケアを受けたくてもどこに行けばいいのかわからない人がほとんどです。
欧米との診療体制の違いについて小林先生は「足の健康が生命に深くかかわっていることが認識されていないことに尽きると思います」と指摘します。
生命との関係でいうと、糖尿病や透析の患者は足のトラブルに特に注意する必要があります。
「神経障害のために知覚が鈍くなるとたこやうおのめ、かかとや足底の角化症などのトラブルがもとで足に傷ができても気づきにくいのです。また、動脈硬化がかなり進んでいるうえに、全身の血行障害もあるので、いったん足に傷ができると短期間で悪化する傾向がみられます」(小林先生)。
たとえば親指にできた小さな傷が500円玉ほどの大きさになって初めて気づき、その1週間後には親指が腐り始め、適切な治療を施さなければ1か月後には親指を切断するといった経過を辿るのは、それほど珍しいことではないといいます。
「さらに足を切断した透析患者さんのうち、約半数は1年以内に死亡しているという衝撃的な研究データもあります」(小林先生)。
糖尿病や透析患者以外の人も安心は禁物です。血行障害がなくても足のトラブルによる痛みをかばい、歩くときの足底圧が不均衡になると、血流が悪くなるからです。
「年をとるほど全身の動脈硬化は進んでいますから、脳梗塞や心筋梗塞を発症するのと同じように足の血管が詰まる“足梗塞”(下肢末梢動脈疾患/PAD)を起こします。PADが進行し、歩行が困難になるとサルコペニア(筋力低下)やフレイル(虚弱)をきたし、寝たきりになるリスクも高まります」と小林先生は警告します。
高齢になっても“歩ける足”を保つには若い頃から足の健康に関心を持ち、「命にかかわりないから」とたこやうおのめ、外反母趾、巻き爪、角化症などを放置せず対応することが肝心です。