足を救うことを目的に、最適な治療を選択していく
同病院のフット外来では最初に足外来の医師が診察を行い、必要な検査を実施したうえで足の状態を診断します。
そして、フットケア外来やフットウェア外来、さらには関連する診療科と緊密に連携しながら足のトラブルに応じた治療やケアを行います。
このうち、血行障害が重症化している場合は足外来での治療が中心となります。循環器科や心臓血管外科とも検討を重ね、カテーテル治療やバイパス手術による血行再建治療、自己細胞移植による血管新生療法などの先端治療(下表参照)の中から、足を救うことを目的に最適な治療を選択します。
「足を切断することになってもその範囲を最小限にとどめられるよう切断前に先端治療を行うこともよくあります」(小林先生)。
「フットケア指導士」が足のトラブルに日常的に対応し、重症化を防いでくれる
湘南鎌倉総合病院 看護師
愛甲美穂さん一方、さまざまな足のトラブルに日常的に対応し重症化を防いでくれるのが、日本フットケア学会が認定する「フットケア指導士」です。その多くは看護師で、フットケア外来のほか糖尿病や透析の治療現場で活動しています。
同病院のフットケア外来でもフットケア指導士の資格を持つ看護師の愛甲美穂さんが足病変のケアに取り組んでいます。
「足のケアの基本は洗浄と保湿です。どの患者さんにも正しい方法を身につけていただけるよう指導しています。また、たこやうおのめがある人には原因となる刺激を避けるための対策を行ったうえで、角質を除去するケアを施します」(愛甲さん)。
さらに専用の道具を使い、巻き爪や肥厚爪など患者が自分では手入れしにくい爪をカットしたり、かかとや足底にできた亀裂、乾燥、角質の肥厚には角質の除去や保湿ケアを行ったりしています。
このように継続的なケアを行うことにより重症化を防ぎ、傷をつくりにくい足に変えていくのです。
さらに愛甲さんにはもう一つ重要な役割があります。それは血行障害の早期発見です。ハイリスク患者である糖尿病や透析の患者には定期的に足の血流や知覚の状態を調べる検査を行い、異常が見つかれば足外来の専門医に診断と治療を依頼します。
足の健康を守るためには靴へのサポートも一元的に行う必要があるため、フットウェア外来では足の義肢装具を専門とする義肢装具士の大平吉夫さんが医師からの処方に基づいてフットウェアの製作に取り組んでいます。
その方向性は疾患によって異なり、「関節が変形したり硬くなったりしている人、血行障害や神経障害が進行している人には過度に靴が圧迫しないよう足に適合する靴を、外反母趾などで足のアライメントが崩れている人には定位置に矯正するインソールや靴を製作しています」と大平さんは説明します。
フットウェアの製作後も定期的にフォローアップを行うほか、靴選びのアドバイスや症状に応じた足のストレッチを指導するなど、足外来やフットケア外来の治療・ケア効果を持続させ、支障なく“歩ける足”になるよう縁の下で支えます。
「足の健康を守ることは全身の健康を守ることに確実につながります。健康寿命を10年延ばすためにも足のトラブルがある人はフット(フットケア)外来をぜひ受診してください」と小林先生は呼びかけています。