【連載】フィギュアスケート愛(eye)フィギュアスケート愛(eye)とは……
本誌『家庭画報』の「フィギュアスケート」特集を担当する、フリー編集者・ライターの小松庸子さんが独自の視点で取材の舞台裏や選手のトピックスなどを綴ります。
2018年7月1日。国際スケート連盟(ISU)が定めている新年度初日に合わせ、髙橋大輔さんの現役復帰という驚きのニュースが飛び込んできました。撮影/『家庭画報』編集部やり切れていないままだった自分に気がつき、現役復帰を決意!
まさか、まさかのニュースが飛び込んできました。7月初めの日曜日に日本列島を駆け巡った、「髙橋大輔さん、現役復帰!」。
ファンの皆さんの心にぽっかりと大きな穴が開いた現役引退。あれから4年近くの歳月が過ぎました。2014年2月のソチ五輪が終わったあと、怪我のため休養を発表していた髙橋さんが引退表明会見を行うと聞き、岡山に急遽向かったのは同年10月14日朝のこと。会見でふと見せた、心ここにあらずの髙橋さんの表情が今も忘れられません。
ソチ五輪直前の怪我、楽曲の問題など、次々と襲いかかる試練の波に、フィギュアスケートに対するモチベーションの糸が切れ、滑る喜びが見いだせなくなってしまったんだなと感じた、とても悲しい引退表明でした。
大勢の報道陣に囲まれて記者会見に臨む髙橋さん。自分に正直になって覚悟を決めたからか、すっきりとした表情が印象的でした。撮影/『家庭画報』編集部引退後、最初の1年間はアイスショーにもほとんど出ず、ニューヨークで過ごしていた髙橋さん。心の傷口が少しずつふさがる時間が必要なんだろうと理解はしつつも、もしかしたらこのままフィギュアスケート界にはもう戻ってきてくれないのではないか、とヒヤヒヤしていたファンの方も多かったのではないかと思います。
確かに、その心配はあながちはずれでもなく、2017年『家庭画報』1月号の髙橋さん特集でインタビューさせていただいた際にも、「ニューヨークに行く直前は、スケートが好きではなくなっていた」と語っていました。
日本の男子フィギュアスケート界が世界へと通じる扉を幾つも開けてきた先駆者の髙橋さんだからこその、背負ってきた荷の重さ、苦しみの深さを垣間見た気がしました。