曲によって全く異なる世界を表現してくれるのが、髙橋さんのスケートの魅力。ダンスなどの舞台経験を経て、ますます磨きがかかった大輔ワールドを競技の世界で再び見られるのが楽しみです。2014年『家庭画報』12月号「髙橋大輔と世界のトップスケーターが魅せる 華麗なるアイスショー」より 撮影/吉成大輔現役引退からはや4年。覚醒への道程を振り返って
しかし、やはりすべての出来事は必然なんですね。
2014年の現役引退以降、フィギュアスケートからしばし離れていた時間があったからこそ、久しぶりのアイスショーで高揚感、幸福感を再び感じられたこと。
髙橋さんの表現力に魅せられた
ダンス舞台劇『LOVE ON THE FLOOR』のプロデューサーたちから寄せられた長年のオファーを遂に受け入れ、ダンサーとして舞台に立ち、踊り切ったこと。
ダンスの特訓により作り上げられた肉体と演技力で、歌舞伎界とコラボした氷上エンターテインメント
『氷艶2017 破沙羅』において、また新しい世界の可能性を体感したこと。キャスター、コメンテーターとして外側から客観的にフィギュアスケートを、そして選手たちを見つめることができたこと。
2011年『家庭画報』12月号で初めて髙橋さんにインタビューさせていただいてから、ずっと取材を続けてきましたが、さまざまな試練も含めて一見回り道に見えるかもしれないあらゆる出来事が、表現者、エンターテイナー・髙橋大輔を進化&深化させる糧になってきたのだと、今は感じます。
「これまでは、勝てないのだったらやるべきではない。周囲の期待に応えなければ、と思って今まではやっていたが、全日本選手権でそれぞれの思いを持って滑る現役選手たちの姿に感動した。
ソチ五輪のあと、怪我で世界選手権を欠場したことにより、さっぱりとした気持ちで次に向かえていなかったのではないかと考えるようになった。
引退後の4年間のうち、2年間は現役復帰なんて頭にも浮かばなかった。やり切れていなかったと気づき始めたのはこの1年くらい。
わがままだが、今回は自分のためだけにやりたい」と囲み会見で語ってくれましたが、背負ってきた荷の重さに改めて胸が詰まる思いでした。
「勝てないのならやるべきではない」から、「勝つためではなく、自分自身のスケートととことん向き合って、やり切りたい」へ。引退から4年の時を経て32歳になった今だからこそ、スケートへの思いを素直に再確認できたのかもしれません。写真/つのだよしお/アフロそれにしても。なんという笑顔でしょう。一点の曇りもない、突き抜けたこんな笑顔を髙橋さんが見せてくれるのはいつ以来でしょうか。
平昌五輪で団体金メダルを獲得して、心底嬉しそうだったパトリック・チャンさん(カナダのフィギュアスケーター。2018年4月16日現役引退発表)の笑顔を思い出しました。