昔ながらのクサンバの塩田
京都で多くの職人を訪ね、食文化を掘り下げた大村しげさんの手腕は、バリ島でも生かされています。バリ島の東側の海岸、クサンバでは砂浜の塩田に足を運び、その様子を詳細に記録。
本連載第1回でも末富の3代目・山口富蔵さんが大村さんとともに塩田を訪れた思い出を語っています。
いまもバリ島では大村さんが目にした当時と同様の手法で塩づくりが行われていました。手順は次の通り。職人が肩に担いだ桶で海水を汲み上げ、砂浜に撒く。海水は少量を一定のリズムで撒いてゆきます。
海水が砂に吸収されると、木のへらで塩を含んだ表面の砂をかき集める。次にその砂をプレスして搾った海水を舟形の桶に入れて何段階かに分けて濾(こ)す。
最後に海水を台の上の浅いシートの上に流して、天日で水分が蒸発すれば塩が残る仕組みです。
強い日差しと、海水がきれいだからできる製法だそうで、日本で普通に売っている塩と比べると、刺激が少なくてまろやかな味でした。
大村しげさんは、塩の味を甘いと言い、「日本のだだ辛い塩化ナトリウムとはどだいわけが違う」(『ハートランド バリ島 村ぐらし』淡交社)と絶賛。周囲へのおみやげとしていたことも書かれています。
生粋の京女を大いに喜ばせたバリ島のユニークな食文化はいかがでしたか? 次回は、バリ島の舞踊や、伝統的な織物であるイカット(絣)について紹介します。お楽しみに。
川田剛史/Tsuyoshi Kawata
フリーライター
京都生まれ、京都育ち。ファッション誌編集部勤務を経てフリーライターとなり、主にファッション、ライフスタイル分野で執筆を行う。近年は自身の故郷の文化、習慣を調べるなか、大村しげさんの記述にある名店・名所の現状調査、当時の関係者への聞き取りを始める。2年超の調査を経て、2018年2月に大村しげさんの功績の再評価を目的にしたwebサイトをスタートした。
http://oomurashige.com/ 文・撮影/川田剛史