レディ・フィオーナ流、ロイヤル・アスコットの楽しみ方
さて、話をファッションから、ロイヤル・アスコットの楽しみ方に戻しましょう。せっかく直接インタビューできるとあって、不躾にも「競馬の掛け金はどれくらい?」と質問。それに対して「1レースにつき2ポンドよ」とレディ・フィオーナがあっさり答えたのには驚きました。
自ら執筆された6代目伯爵夫人の伝記『Lady Catherine and the real Downton Abbey』の中にあったエピソードを、ふと思い出しました。6代目伯爵夫人は競馬に夢中になりすぎて大穴を開け、夫に内緒で高価なジュエリーを売ったことがあったようです。
ロイヤル・アスコットにでかける6代目カナーヴォン伯爵と夫人。モノクロームの写真からも、優雅なロイヤル・アスコット・ファッションが感じられます。しかし、元国際会計士というキャリアでシニア・コンサルタントの資格を持つレディ・フィオーナは、本当に慎重な方です。
2018年のロイヤル・アスコット
今年も、ロイヤル・アスコットは華やかにオープン、馬たちは疾風のごとく駆け巡って行きました。
女王に続く王族たちの入場。ターコイズブルーの帽子姿は、馬好きのプリンセス・アン。「ブリティッシュ・エチケット・スクール」フィリップ・ザイクス氏撮影。数々のシャンパンボトルがはじける泡とともに開けられ、大輪の花が開いたようなハットの女性たちは、誰もが特別なプリンセスのようでした。
シャンパングラスを片手に競馬を楽しむレディたち。(筆者撮影)そんな中、ハイクレアの伯爵夫人レディ・フィオーナは、洋服や帽子にお金をかけず、掛け金も少額……英国では彼女のような人を「Down to earth」、つまり地に足がついている人と形容します。そんな彼女は、自然に身についた自信に満ちた美しさがみなぎり、いつものことながら際立っていました。
この夏初めて「ロイヤル・アスコット」デビューをした著者。(上2点・筆者撮影)●フィオーナ・カナーヴォン伯爵夫人/ロンドン生まれ。6人姉妹の長女。 セント・アンドリューズ大学で英語とドイツ語を専攻、ロンドンで国際会計士として働く。1999年カナーヴォン伯爵と結婚。一人息子エドワードの母。ハイクレアのガイドブックをはじめハイクレア絡みの数々の著書をしたため、歴史家として知られる。趣味は乗馬、読書。オフィシャル・サイトは
https://www.ladycarnarvon.com/●ハイクレア城に暮らす/ドラマ『ダウントン・アビー』で一躍脚光を浴びた英国ハイクレア城。その城に今も住む第8代カナーヴォン伯爵家の人びとのライフスタイルを、英国フリーライター山形優子フットマンが取材。貴族の暮らしに息づく英国文化をご紹介します。
(今までの連載はこちら) 山形優子フットマン/Yuko Yamagata-footman
フリーライター
上智大学文学部社会学科卒業。カルフォルニア州立大学心理学科でヒューマニスティック・サイコロジーを専攻、修士課程修了(ロータリー財団奨学生)。新聞記者を経てフリーライターに。在英約30年。イギリス人男性と結婚、3人の娘の母。著書に『憧れのイングリッシュガーデンの暮らし』(エディシォンドゥパリ)、『なんでもアリの国イギリス なんでもダメの国ニッポン』(講談社文庫)他。