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知花くららさん、憧れの織り「紋紗(もんしゃ)」が生まれる工房を訪ねて

2018.07.17

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土屋さんが2人の人間国宝のもとで磨いた才能とは


土屋さんは高校時代から地元の日本画家に学び、当時モダンデザインの教育で注目されていた京都インターナショナル美術専門学校に進学します。その教育理念は「独自のデザイン」を生み出せる人を育てること。

この頃から古美術や伝統芸能に親しむようになり、土屋さんの内面に新しいもの、自分ならではの美を追究する気質が養われます。

志村ふくみから─
植物染めの魅力と叙情溢れる感性を



志村先生と工房の仲間

志村先生と工房の仲間とで、花の寺に出かけたときの写真。約40年前の思い出深い一枚。

在学中に京都嵯峨野に工房を持つ志村ふくみさんの仕事ぶりを見学する機会を得たことで、志村さんの人柄と植物染料の美しさに魅了され、弟子入りを志願。

志村さんのもとにいた3年半で、その人柄の高潔さや自由な考え方が土屋さんにすり込まれます。独立後は志村門下の「小桉会(おぐらかい)」に所属。日本伝統工芸展にも挑戦し、評価され始めます。

独立する際に記念にいただいた残り裂

3年半お世話になった志村工房から独立する際に記念にいただいた残り裂。志村先生は弟子の技量や性格に合ったデザインの織りを担当させてくださったそう。

北村武資から─
超絶技巧の織技と織りに対する姿勢を


研修旅行に出かけたときのスナップ

中国へ研修旅行に出かけたときのスナップ。桂林で北村さんと写した一枚。

初期は紬織で古典に取材した作品を制作していましたが、長良川を主題にした軽やかなものを作りたいと織った生絹の「鮎の瀬」が平成8年の日本工芸会総裁賞を受賞。薄く透ける素材への取り組みが始まりました。

ちょうどこの年から、北村武資さん指導による重要無形文化財(羅)伝承者養成研修会に参加することに。

機の組み立てに始まり、機に座る姿勢からあらゆる織りの基本、さらに織物の意義に至るまで学んだことで、土屋さん独自の「紋紗」を生み出し、精力的に作品を発表。

平成22年には重要無形文化財「紋紗」の保持者に認定され、他の追随を許さない唯一無二の美を織り続けているのです。

伝承者養成研修会で、機に向かう土屋さん

「羅」の人間国宝・北村武資さんが指導する重要無形文化財(羅)伝承者養成研修会で、機に向かう土屋さん。

織りを学んだ際の資料

北村さんの指導のもと、機を組み立て、あらゆる織りを学んだ際の資料。

土屋さんの作品たち


鮎の瀬

「鮎の瀬」
平成8年の日本伝統工芸展で日本工芸会総裁賞を受賞した生絹着物「鮎の瀬」は、土屋さんにとって分岐点となった作品。「長良川の近くで育った自分にしかできないデザインを」と織り上げたもの。東京国立博物館蔵

翠露

「翠露」
平成9年東海伝統工芸展で東海伝統工芸展賞を受賞した紬織の作品。この年、日本工芸会正会員に認定されました。薔薇で染めたグレーと葛の葉のグリーンの2色で、5段階の絣の繊細な格子文様を織り出した一枚。個人蔵

月下渓韻

「月下渓韻」
平成18年日本伝統工芸展で文部科学大臣賞を受賞した作品。初めて絣の空間を作り、絵羽調に制作した紋紗。山水画の中に遊ぶ気分で、白く月に照らされた渓流に瀬音が聞こえてくる情景を表現して。文化庁蔵

桃花源

「桃花源」
桃が満開に咲く桃源郷をイメージした、平成23年の日本伝統工芸展出品作。前年に「紋紗」の重要無形文化財保持者に認定されてから、最初の作品となる。薄紅色に緑の絣が若々しい一枚。岐阜県美術館蔵
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