「兎も片耳垂るる大暑かな」と芥川龍之介が詠んだごとく、毎日蒸し暑い日が続いています。そんな酷暑にもめげずに、今月も何かときものでお出かけを!夏の盛りには、「きものはあっさりと、帯に涼やかな風情を映す」という着こなしがポイント。皆様への暑中見舞い代わりに、どうぞご覧ください。
母のきりりとした宮古上布で寄席へ
友人が勝手に「奥目白」と呼んでいる一角の路地裏に、茶道教授だった方の純和風の邸宅をいかした甘味処があります。とある夏の宵、その隠れ家のような建物の2階の座敷で柳家花緑さんの独演会が催されました。
柳家花緑さんの独演会にて。観客は30人ばかりという、なんとも贅沢な一席でした。この日、母のタンスから選んだ一枚は凛とした藍の宮古上布。「東の越後、西の宮古」と呼ばれる上布の代表格です。そもそも上布とは「細い糸で織られた布」という意もあり、言葉通り、軽くて、サラッとして、肌につかず離れず、本当に気持ちの良い織物です。また、宮古上布は独特の光沢があり、歩く姿や立ち居の何気ない仕草を涼やかに感じさせます。
リズミカルに銀糸で表現した水しぶきが一層涼しげ。「ぎをん齋藤」で求めた一本です。コーディネートしたのは、白地の麻に水の勢いを感じさせる波や躍動感ある波頭、葦など水辺の景色を描いた母の染め帯。帯揚げや帯締めに、極力色を使わずに帯に馴染ませる引き算は私のセンス!麻のきものや長襦袢はシワになりやすいため、家に戻ったらすぐに霧吹きで全体にスプレー。そのまま自然乾燥すると、パリッとした質感が蘇ります。こんな贅沢な母のきものに包まれた日は、「母様ありがとう!」と思わずにはいられません(笑)
オフホワイトのワントーンStyleで展示会へ
誉田屋源兵衛さんは、京都室町で創業280年を迎える帯の老舗です。その10代目当主でいらっしゃる山口源兵衛さんは、本当に粋な現代の歌舞伎者(かぶきもの)です。以前、こちらのきものブランド「麻世紗」のモデルをさせていただいたご縁で、この日は銀座で催された展示会の初日へお邪魔しました。
左が山口源兵衛さん。立ち姿も懐手(ふところで)のポーズも、帯に挿した扇子もキマっています。以前、私がモデルを務めたきものブランド「麻世紗」のイメージショット。この日のきものは母の生紬です。一見すると麻のように素朴で張りのある風合いで、色味も自然なまま。アイスグレーの濃淡で大胆に雪輪を染めた帯を合わせ、帯締めや帯留めも色を使わずに氷のような表情にこだわった「シャーベット」コーディネートの完成です。
こちらが大人のシャーベットコーディネート!ここで、帯揚げまで全てを無彩色にしないところが、「娘のセンス」の見せ所!グレーを基調に、お太鼓の脇からほんのりと茜色が見える一枚をチョイス。このワンポイントで、ぐっときもの姿に色香が漂います。
帰宅してからは、愛犬タンゴと愛猫リノにもコーディネートを披露(笑)。