夏の風物詩を描いた帯で女子会へ
実はこの夏、父が28歳の時に描いた六曲一双の屏風がふた組発見され、一日だけクローズドで初公開されました。所有者が長年に渡り大切に保管くださったものですから、どの画集にも載っておらず、私も作品の存在すら知りませんでした。母と結婚する前の作品ということもあり、母でさえもその屏風の存在を知らなかったかもしれません。
世紀のご対面を共有してくれたのは女子美時代の同級生やその友人たち。作品の前では残念ながら写真を撮ることは叶わなかったのですが、芸術鑑賞をして心を満たした後は、美味しいイタリアンでお腹を満たすのが女子会の通例です。
父の作品を一目見ようと集まってくれた仲間たちと。この日は、先ほどの生紬に母の紬屋吉平の帯をコーディネート。蟹と金魚というユニークな取り合わせもさることながら、黒×茶の色使いがなんともシックなお気に入りの一本です。
この日は帯締めや珊瑚の帯留め、草履の果てまで母のものを着用。「娘のセンス」はというと?女性同士の集まりということもあり、思い切って鮮やかな朱色の帯揚げを合わせて、艶やかな大人の可愛らしさを演出しました。
草履は靴ほど明確なサイズがありませんから、母のものを履くことができます。余談ですが、こどもの頃に「珊瑚の簪は冬のものだ」と母から聞かされました。夏は翡翠を使うのだそうです。昔、ご婦人方が丸髷を結っていた時代の美学だと思われますが、帯留めも夏には珊瑚を使わないのかしら?とちょっぴり気になります。こんな時、つくづく母が居てくれたら……と思うものです。ファッションの世界では、珊瑚は海を思わせる夏のアクセサリーですし、金魚や蟹のモチーフともぴったりくるので、「娘のセンス」的には、あえて「良し」としました。