ハイクレア城に暮らす ドラマ『ダウントン・アビー』で一躍脚光を浴びた英国ハイクレア城。その城に今も住む第8代カナーヴォン伯爵家の人びとのライフスタイルを、英国フリーライター山形優子フットマンが取材。貴族の暮らしに息づく英国文化をご紹介します。水曜更新。
(今までの連載はこちら) 犬の散歩も兼ねて自転車で朝の運動をするレディ・フィオーナ。Vol.8 伯爵家のキッチンガーデン
夏の間、レディ・フィオーナは自転車で城内の庭を巡り、毎朝決まってキッチンガーデンに立ち寄ります。年月を経て色あせたレンガ塀の内側では、夏の野菜たちが朝の光を謳歌しています。レディ・フィオーナのお目当ては壁の周辺にいる8羽の鶏です。
城から800mほど離れた所にあるキッチンガーデン。右:放し飼いにされている鶏。左:レディ・フィオーナが鶏に餌を与えている間、柵の向こうで、じっと待つ犬たち。鶏は飼い主の自転車のブレーキの音を合図に、コッコッコッと喉を鳴らしながら、彼女のほうにやって来ます。レディ・フィオーナは一羽一羽の名前を呼んでは、自らの手で餌をまきます。「リジー、ジェーン、キティ、リディア……」と、鶏たちには、17世紀英国の女流小説家ジェーン・オースティンの小説『高慢と偏見』に登場する5人姉妹の名前や、オースティンの他の小説に登場する女主人公達の名前がついています。