日本でも国や自治体による貸し出しが始まっている
一方、日本では福祉用具として扱われています。介護老人保健施設「葵の園・武蔵小杉」施設長の医師、高栁和江さんは、2011年に岩手県内の介護老人保健施設でライオンのぬいぐるみとの比較でパロの効果を調べました。
パロの臨床効果を研究する高栁和江さん
元・日本医科大学准教授の高栁和江さんは、笑いの健康効果などを研究する外科医。パロがもたらす認知や心理への効果も調べている。そして、認知症の程度や動物の好き嫌いに関係なく、男女ともにパロのほうを抱く回数が増えることを確認しました。徘徊する人が落ち着く例、赤ちゃんを世話するようにパロを扱い、活動量が増える例もみられました。
「パロがぬいぐるみと違うのは、話しかけると声と体で反応すること。ゲストも職員たち もパロに癒やされるようです」と高栁さん。
介護施設での導入が進むパロ
介護老人保健施設の葵の園・武蔵小杉には2体のパロが導入されており、ゲストや職員にかわいがられている。岡山市では2014年、「最先端介護機器の貸与モデル事業」で1割負担の月2000円(税別)でレンタルが開始されました。厚生労働省も認知症のセラピー支援として介護施設向けに試用貸し出ししています。
現在、世界各国で約5000体以上のパロが利用されており、日本では3000体の半分が個人による使用です。「パートナーを亡くしたかた、ペットを亡くしたかたなどが購入してくださっています」と柴田さん。
価格は、3年保証・メンテナンスパック付きで42万円、1年保証・メンテナンスなしで36万円。販売する「知能システム」が百貨店や科学館・博物館などパロを触ることができる場所を紹介しています。
言葉や音、電子表示などでコミュニケーションする家庭用ロボットに比べると、パロの反応は生物的です。しかし、耳の遠い人や声が出せない人、認知機能の落ちた人でも使えます。また、インターネットにつながらないので個人情報漏洩の心配がなく、OSのアップデートなどは必要ありません。
パロには副作用がなく、向精神薬を減らす効果もあるため、将来的には減薬や薬との組み合わせも考えられます。「日本でも医療機器としての申請をして、医療費を減らすことにも貢献したい。子どもや障害者のかたたちにも広げていくのが目標です」と柴田さん。
近いうちにパロやほかのコミュニケーションロボットが家庭で共存する可能性があります。そうなれば、ロボットという存在が生命あるもの、人生を共有したかけがえのないものとしてみなされ、全く新しいパートナーシップが形成されていくかもしれません。