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ロボットとの触れ合いが認知機能の衰えを防ぐ?未来の医療

2018.08.10

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ロボットセラピー
~アニマルセラピーを模したロボットによる治療~


柴田さんは、1995~98年の米国での研究中に、認知症の高齢者や自閉症児の施設で、アニマルセラピー(動物療法)を体験し、ペットの代わりになるロボットを治療に役立てたいと“ロボットセラピー”を提唱しました。

アニマルセラピーは、イヌやネコ、ウサギ、ウマなどの動物と触れ合うことで、運動など何かを始める動機を提供し、ストレスの減少、血圧の安定、コミュニケーションの活性化など心身あるいは社会的な効果を目指すものです。


とはいえ、動物アレルギー、人畜共通感染症、引っかきや嚙みつきといった問題があり、特に施設での集団居住ではペットを飼えないことが多いのです。

ロボットであれば、動物とは異なり、疲れず、気まぐれも起こさず、故障はあっても死ぬことはなく、ペットロスも起こりません。「えさや住まい、医療などにかかる費用を考えると、トータルのコストとしては動物を飼う際の10分の1程度で安価です」(柴田さん)。

柴田さんは、イヌ、ネコ、アザラシの形のロボットを開発し、心理実験などを行いました。その結果、イヌやネコは本物の動物と比較してしまうのに対し、アザラシであれば本物を詳しく知る人がほとんどいないことなどから、多くの人に受け入れられることを示しました。

ロボットセラピーという言葉は、現在では、動物型ロボットのみならず、コミュニケーションができるロボットの医療的効果を指すものとして広がりつつあります。

ただし、今のところ医学的効果の科学的根拠を持つロボットはパロだけです。今後、臨床試験で科学的根拠を示せるロボットが増えてくるかもしれません。

パロや個人用ロボットの発展の歴史
〜2000年代から徐々に発展し、近年大きく進化した〜


1992年
柴田崇徳さんが動物型ロボットの研究を始める。

1997年
柴田さんがパロの最初のプロトタイプを完成。

1999年
ソニーがイヌ型ロボットAIBO(アイボ)を発売(2006年まで)。

2005年
第8世代まで改良されたパロの販売が始まる。

2009年
米国食品医薬品局(FDA)がパロを神経学的セラピー用医療機器として承認。

2010年
富士ソフトが教育・研究機関向けにヒト型コミュニケーションロボットPALRO(パルロ)を市販、2015年には個人用のPalmi(パルミー)を販売。

2013年
大幅に改良された第9世代のパロが市販される。
デアゴスティーニ・ジャパンが組み立てられるヒト型ロボットRobi(ロビ)を販売開始。

2014年
ソフトバンクがヒト型ロボットPepper(ペッパー)を発表(一般向けモデルは翌年から発売)。

2017年
ソニーがデザイン変更し、aiboと改称して発売する。

2018年
パロがヨーロッパでも医療機器に。

柴田崇徳(しばた たかのり)さん

柴田崇徳さん

1989年名古屋大学工学部卒業、92年同大学大学院博士課程電子機械工学専攻修了。博士(工学)。93年通商産業省工業技術院(現・産業技術総合研究所)機械技術研究所ロボット工学部研究官。95~98年米国MIT人工知能研究所研究員、96年スイス・チューリッヒ大学人工知能研究所客員研究員。2001年から産総研。09~10年内閣府・情報通信および在宅医療介護担当。13年から現職。
お問い合わせ/知能システム 電話0763-62-8686 http://intelligent-system.jp/

取材・文/小島あゆみ イラスト/©tocko〈LAIMAN〉(タイトル) 撮影/八田政玄

「家庭画報」2018年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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