患者主体で話を進めるためのケーススタディー
ケース(1)
がんと知ってパニック状態に。医師の話を冷静に聞いて、判断する自信がない
Aさん(60歳)は人間ドックで見つかったがんの精密検査を受け、ステージⅢAの胃がんと診断されました。進行がんであったことに大変なショックを受け、両親も胃がんで亡くしていることから、パニック状態に陥ってしまいました。
医師からは1週間後に治療法について詳しい説明をするといわれましたが、冷静に話を聞いて、判断をする自信がありません。とはいえ病状が進むことを考えると先延ばしにするのも心配。治療法を決める大事なときなので、どのように対応したらいいか迷っています。
【患者の心得】
家族か友人に同行してもらう。看護師のサポートを受ける方法もまずは、1人ではなく信頼できる家族か友人と一緒に説明を聞くことをおすすめします。自分が落ち込んでパニックになっていることを主治医に正直に伝えるのは、むしろ主体的な行為だといえます。
「がん看護外来」など、決断を補助してくれる看護師のサポートを受けられる場合もあります。また、病気に対する理解が深まるようなパンフレットやビデオなどがあれば提供してもらうのもよいでしょう。
いずれにしても、治療法の決定までにどれくらいの時間の余裕があるかを確かめることが大事。そして急いでその場で決定せず、いったん持ち帰るのが賢明です。
ケース(2)
医師の説明が、長くて難しくてうんざり。最後まで我慢して聞くべきか
80代の母親が大腸がんと診断され、Bさん(55歳)は、治療法を決めるために母親と一緒に医師の説明を受けました。
医師はパソコンの画面を指しながら、CTスキャン検査の仕組み、内臓や動脈の話、大腸の構造などから丁寧に説明し始めました。10分ほど経って、やっと治療法の話に辿りついたかと思うと、今度は専門用語の連発で、2人ともほとんど理解することができませんでした。
難しくて不安でも、この話は必要なのだろうかと疑問に思っても、主治医の話は最後まで聞くのが礼儀なのでしょうか。
【患者の心得】
理解できない話が5分続いたら遮って方向転換してよい医師なりに、患者さんに事実を正確に伝えようと一生懸命説明しているつもりなのですが、医師が伝えたいことと患者さんが知りたいことのずれが不安や疑問を生じさせるのでしょう。
そのような説明が5分続いたら危険信号。「ちょっと専門的すぎて私たちには理解するのが難しいのです。母が今どのような状態でどんな治療法が考えられるかを教えていただきたいのですが……」などと、自分たちが何を知りたいのかを伝え、医師の頭を方向転換させましょう。必要な情報を得るには、受け身でなく、自分から働きかけることも大事です。
ケース(3)
医師がリスクの話ばかりする
胃がんの手術について説明を受けたCさん(58歳)。主治医が、手術がうまくいかない可能性があります、再発するケースもあります、などよくない話ばかりをするので、気が重くなってしまいました。
【患者の心得】
医師の思考回路と思い受け止める医師は万が一の事態を想定して、患者さんから「聞いていない」といわれないよう、利益よりも想定される不利益を多めに語る傾向にあります。あなたのケースが特に心配なわけではなく、医師の思考回路とはそういうものだと受け止めてください。