季節の移ろいをなごり惜しむように秋になっても咲き続ける夏花たち。今年最後の豪華な彩り。 一瞬、私は何のことかわからなかったが、西村さんの視線の先には、竹に視界を阻まれながら黒々としたものがみえた。
よくみると、木だ。エノキとかヤマザクラという落葉広葉樹ではない、冬場でも葉を落とさず暗い森をつくりだす照葉樹だ。 そこには、シイやタブ、それに名前がわからない木などが、寄り添うように影を落としていた。
どれも大木で、ひと抱えほどの幹の太さがある。竹林でもなく田んぼでもない、明らかに、それ以外の異空間が、突如としてあらわれたのだ。 木の幹あたりをみると、大きな板碑があり、山の神と彫られていた(次回につづく)
アトリエの雑木林にカフェテーブルをだしてお茶を楽しむ。色づきはじめた木々の中は、空間がどんどん明るくなってゆくので、晴れた日は、外が一番。この北側の林は、比良山がみえる場所で、風通しがとても良い。大きな木はクヌギで、この敷地にもともとあったものだ。開墾の前は、ヒノキの中で窮屈そうに生えていた。樹高は、18mをこえる。これまでの記事はこちら>> 今森光彦
1954年滋賀県生まれ。写真家。 切り絵作家。
第20回木村伊兵衛写真賞、第28回土門拳賞などを受賞。著書に『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社)、『今森光彦ペーパーカットアート おとなの切り紙』(山と溪谷社)ほか。
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