日本の歴史にジュエリー不在の謎!
細田栄之画「風流やつし源氏 朝顔」1789年/Fletcher Fund, 1929/
日本にはジュエリーがなかった?
世界各国の博物館や美術館に足を運ぶと、そこに展示されている古代からの金、銀、ブロンズなどを用いた装身具や実用品の多さに驚きます。数だけで言えば、芸術の中心と言われる絵画、彫刻などよりもはるかに多いのですよ。しかしながら日本の美術館には、いわゆる「ジュエリー」に相当するものはほとんどありません。
世界の例外、日本
世界における例外中の例外が日本人なのです。古墳時代の終わりから江戸時代の末期までの間、日本にはジュエリーらしいジュエリーはほとんど存在しなかった。飾り櫛やかんざしなどの髪の毛の飾りはあれど、日本人は指輪もネックレスもイヤリングも使わなかったのです。この理由について色々な歴史学者に聞きましたが、誰一人まともな返事をくれません。要するに不明なのです。こんな歴史を持った民族は他にはありませんよ。
さて、ここまでざっと一気に、ジュエリーの歴史を振り返りました。まだもう少し、お勉強が続きます。次回はヴィクトリア時代に代表されるような近代のジュエリーについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
第2回 ジュエリーの近代史、激動の100年 を読む第3回 女性のためのジュエリーが誕生するまで を読む第4回 日本のジュエリー市場の特異性 を読む 山口 遼/Ryo Yamaguchi
宝石・宝飾史研究家
大学卒業後ミキモトに入社。退社後はアンティーク・ジュエリーの研究と販売に従事。真珠および宝飾品史の専門家として、新聞や雑誌に数多く寄稿。ジュエリーに関する著書多数。