足元を変えることで
全身バランスも変わるスニーカーを履くと、まず腰の位置が変わります。当然、今までの3:7とか4:6の全身バランスも変わってくるので、服の着こなしや選び方も変わらざるを得ないんです。例えば、オーバーシャツだと脚が短く見えるのでインにするとか、スニーカーの量感に合わせてパンツはワイドにするなど、今までとは違うコーディネートを考え、スニーカーを履いて素敵に見えるバランスを、鏡の前で研究するようになりました。
更には、今まで自分が持っているラグジュアリーなアイテムとどう組み合わせていくのか、身長と年齢を考えつつ、「痛くない」コーディネートを考えるのは、冒険でもあり、とても楽しい試みでもありました。
どこまでも軽やかに進む
「新たな一歩」のきっかけにおしゃれをあれこれ試行錯誤するのは、年を取れば取るほど面倒なもの。いったん築いたスタイルを崩すのは、しんどい作業です。しかし、その手間をかけてでもチャレンジして良かったと思えるほど、スニーカーは私に新しい「気づき」をくれました。
軽やかな履き心地しかり、今どきの抜け感しかり。ヒールの目線で見ていた時には見えなかった新たな世界が、パッと開けたような、そんな気分です。
今までのおしゃれに固執することなく、時代に合わせて軽やかに、どこまでも歩いていける自分でありたい……スニーカーは、そんなポジティブな変化をもたらしてくれたのです。
おおさわ千春/Chiharu Osawa
スタイリスト
雑誌のほか、映画の衣装デザインや女優のスタイリングなどを幅広く手掛ける。着る人に合わせた的確なスタイリングやアドバイスは、多くの女優からも信頼を得ている。
撮影/大柳佳緒里 編集協力/湯澤実和子