海尽くしの物語を装い、長唄のお浚い会に
伝統芸能の夏のお浚(さら)い会というと、「浴衣浚い」という言葉があるように、浴衣で行うのが通例。我が長唄の稽古場では、「お洒落をした方がテンションも上がる!」という理由からお客様にも装いを楽しんでいただけるように、きものでお浚い会を行います。
今回私が浚う曲は、海の様々な表情を表した「新曲 浦島」です。曲にちなんでコーディネートに工夫を凝らすのが、きもの好きの密かな楽しみ。海にまつわる文様で物語を綴りたいと思案していたところ、銀座灯屋のホームページで素敵な貝尽くしの訪問着を発見!状態も良くリユースなので価格もお手頃、サイズも問題なかったことから、今回の曲にぴったりと思い衝動買い(笑)。母のタンスから波を織りだした絽綴れを引っ張り出し、合わせてみたら思い描いていたスタイルが完成しました。こんなふうに、目的を絞ってリユースを活用するのも、今どきの「賢い娘のセンス!」ではないでしょうか。
一色采子/Saiko Isshiki
女優
日本画家の故・大山忠作氏の長女として東京都に生まれる。毎日をきもので暮らしたお母様のもとで、コーディネートや着こなしのセンスを磨き、現在はファッションのアイテムを取り入れながら独自のスタイルを楽しむ。趣味の日本舞踊や三味線、長唄では名取になるほど、古典芸能への造詣も深い。現在は、福島県にある二本松市大山忠作美術館の名誉館長や二本松市の観光大使も務める。
【連載】女優 一色采子の「母のタンス、娘のセンス」
構成/樺澤貴子