初代尾張藩主・徳川義直の住居および政庁として、慶長20(1615)年に建造された名古屋城本丸御殿。1930年、天守閣とともに城郭としての国宝第一号に指定されましたが、1945年、空襲により焼失。
戦火を免れた貴重な史料をもとに、2009年に待望の復元工事が開始され、今年6月8日、ついにその全貌が公開されました。
本丸御殿内で最上格の「上洛殿上段之間」は、葵紋を施した細部の装飾から折おり上あげ天井まで、絢爛の極み。約3100平方メートルの総檜造りの殿舎を、樹齢数百年の木曽檜を用い伝統的な木組み技法で復元するなど、創建当時の材料と手法を原則とし、10年もの歳月と総工費150億円をかけた一大プロジェクト。
欄間も多彩な意匠に富む。襖の引手や釘隠しなど3000点におよぶ飾金具、多種多様な木彫や彩色が施された欄間や、狩野派による障壁画や天井板絵に至るまで、江戸期の技術の粋を結集した建造物が、現代の匠の技と情熱によって甦りました。
それはまた、先人の知恵と創意工夫を再発見し、次代の職人たちへ継承する取り組みにもつながっています。