旬を愛でる花旅・庭めぐり(49)猛暑の中でもこれだけ美しい庭があるなんて!〜長野・ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデン
黄色、オレンジ、朱赤と夏らしい華やかな色彩が印象深いシーズンガーデン。シックな銅葉のダリアが植栽を引き締めて大人っぽい表情に。暑い季節を乗り越えて、なお美しい庭に驚く
猛暑ではなく酷暑。今年の夏は本当に暑く、ガーデン関係の方々は皆さん、庭の維持にとても苦労されていました。こんなに暑いと庭を訪ねるほうも熱中症になりそうで、外出を控えていた方も多いと思います。
8月も下旬になり、ひどい暑さもやっと一段落したいま、ぜひ訪ねていだたきたい庭があります。
北アルプスの麓に広がる安曇野にある「ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデン」。
感動するほど美しい、と初夏の様子をご紹介しましたが(
5月30日配信)、こちらの庭がすごいのは、暑い夏の時期も草花がとても元気で、荒れた様子などみじんもなく、美しく管理されていることです。
真っ赤なサルビア・スプレンデンスとオレンジ色のマリーゴールドの間に咲く白い花はユーフォルビア‘ダイアモンドフロスト’。すっきりした色合わせ、大小の花合わせがメリハリのある景色を生み出す。「ラ・カスタ」といえばご存じの方もいらっしゃるでしょう。化粧品メーカーのアルペンローゼ株式会社を代表するブランドで、1996年に日本でいち早く精油を取り入れた上質のナチュラルヒーリング化粧品です。
「ラ・カスタ」のブランドテーマは「植物の生命力と癒し」。それをそのまま庭に表現したのが「ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデン」です。
“この庭から「ラ・カスタ」のイメージが広がるわけですから、庭を訪ねてくれたお客さまに「美しくない景色」は絶対に見せられない。”
ガーデナーさんたちはそんな強い責任感から、日々の管理を徹底しています。その真面目な仕事ぶりはいつ見ても気持ちがよく、だからこそ、この庭に来ると心から癒やされ、気持ちもからだもリラックスできるのだと感じています。
ラストサマーの庭のすばらしいシーンの数々、ご紹介いたしましょう。
エントランスのアイアンの扉には、どの季節に訪ねても美しいハンギングバスケットが飾られている。夏の庭には心を元気にする花色が散りばめられている
「ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデン」で、もっとも季節の色を感じられるのが、芝生の庭に沿ってカフェ前まで広がるシーズンガーデンです。
ここには一年草が多く植えられているので、夏らしいビビッドな色合いの花も多く、華やかな姿を眺めているだけで心が弾んできます。
シーズンガーデンには夏から秋まで咲き続ける一年草が多く植えられている。お盆過ぎに植え替えをするので、草花が生き生きと新鮮できれい。夏の一年草も8月下旬になるとそろそろ疲れが見え始めるのですが、この庭の花は不思議なほど元気。じつはそれには理由があるのです。
「ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデン」では庭に植える一年草のほとんどを、近くにある自社の農場でタネから栽培しています。植え替えの時期から逆算してタネをまき、かなり成長するまで農場で管理してから庭に植え付けます。
夏の一年草は初夏に植え付けるのが一般的ですが、この庭では初夏のほかにもう一度、お盆過ぎにも植え替えをするのです。
だから、8月下旬でも花が元気に咲き、驚くほど美しい景色を見せてくれるのです。このときに植え替えた花は、初秋まで咲き続けてくれます。
初夏には美しく咲き誇っていたハマナスには大きな実がたくさんついて、季節の変化を感じさせてくれる。また、エントランスから続くボーダーガーデンも一部植え替えをして美しさをキープしていますが、こちらは宿根草も多く、8月下旬になると、標高約600mのこの地では秋の気配も感じられる植栽になります。
エントランスから続く宿根草と一年草のミックスボーダー。繊細なピンクの花はクレオメ。蝶が風に舞うような姿から「西洋風蝶草(セイヨウフウチョウソウ)」の和名がある。10月まで咲き続ける一年草。暑さに負けずに咲き誇っていたノリウツギの白花がピンクに色づき始めたり、またシュウメイギクが咲き始めていたり・・・・・・。
8月下旬にはシュウメイギクがかわいらしいピンクの花を咲かせ、秋の気配を感じさせてくれる。少し湿り気のある半日陰を好むシュウカイドウ。花茎までピンクに染まる姿が愛らしい。アジサイの仲間のノリウツギは、暑さに強く夏に開花してくれるのがいい。白から徐々にピンクに変わる花色もキュート。カラフルな夏色の花を楽しみつつ、季節の移り変わりの小さな変化を見つけて散策する時間のなんと楽しいこと! 庭を歩く時間は心を安らげると同時に、わくわくするような気持ちももたらしてくれます。
プロに頼まず、自分たちで庭を設計。それがこの庭の個性
どの季節に訪ねても美しい葉色で楽しませてくれるコニファーガーデン。季節による変化が少ないことが逆に魅力の庭。先日、この庭の母体であるアルペンローゼ株式会社の社長、高橋 彰さんに庭についてお話を聞く機会がありました。私がいちばん知りたかったのは、庭のデザイン・設計はどなたがされたのか、ということ。すると、驚きの答えが・・・・・・。
「すべて私たちがやったんですよ。庭についてはまったくの素人でしたから、世界中のいろいろな庭を見てまわって研究しました」
初めはガーデン設計のプロにデザイン案を出してもらったそうですが、どこに頼んでもテーマパークのような庭のデザインしか出てこないことに悩み、自分たちの思い描く庭は自分たちでつくるしかない、と考え直したそうです。
「だからこの庭はイングリッシュガーデンではないんです。ラ・カスタのイメージを自分たちなりに描いた結果がこのスタイル、この景色になったんです」と高橋さん。
そうか、「ラ・カスタ ナチュラル ヒーリング ガーデン」がイングリッシュガーデンの型に当てはまらない不思議な雰囲気だったのは、そういう理由だったのか、と納得がいきました。
庭のコンセプトは五感で感じること。眺める、触れる、香る、そして、湧き出る清らかな水音や鳥の声を聞き、深呼吸して澄み渡る空気を味わう。
そんなコンセプトをじっくり堪能していただけるように、と、このガーデンは予約制になっています。それも1日100人限定です。
ホームページで予約状況が公開されているので、ホームページ上、または電話でお早めに予約してお出かけください。
さて、毎週水曜更新の本連載は、今回でちょうど1年を迎えます。今後は不定期配信となりますが、旬の花情報をピックアップしてお届けいたしますので、どうぞお楽しみに!