ファンとのつながりがさらに深くなった
確かに、SMAP解散を経たこの3年は、稲垣さんにとって激動の期間だったに違いない。事務所も替わり、WEBテレビといったインターネットを使った新たな活動も経験した。
「反応がリアルタイムでわかるインターネットに自分の日常を出すことで、皆さんのリアルな言葉や日常にも触れることができて、わかっているようでわかっていなかったことがたくさんあったんだなと気がつきました。たとえば、デビュー以来ずっと応援してくださっている人たちにもそれぞれ人生があって、日々こんなふうに暮らしているんだなとか、自分はこういうふうに思われているんだなとか。インターネットを使い始めたことで、応援してくださる人たちとのつながり方がさらに深くなったのは楽しいことですね。たぶん草彅(剛)さんと香取(慎吾)さんも、そう感じているんじゃないかな」
また、役柄の幅も広がっている。来年公開予定の映画『半世界』(阪本順治監督)で演じているのは、地方都市でささやかに暮らす炭焼き職人だ。
「ごく普通の人たちの日常や小さな葛藤を描いた作品です。そういう役もできるようになったんだなと思うと、なんだか嬉しくて。かと思えば、最近の新しい仕事では、3年前は無理だったんじゃないかと思うほど、イカレた役をやってます(笑)。もちろん環境の変化だけじゃなく、年齢的なこともあると思いますが、求めてもらえる幅がより広がって、俳優として今、すごく楽しい。作品ごとに、監督さんのつくり方から違うので、毎回たくさんの発見や気づきがあります。自分が持っている引き出しだけでは、とても対応しきれないところが面白いですね」
柔らかな表情でそう話す稲垣さんは生き生きしていて、内面の充実ぶりがそのまま伝わってくる。
「今は1つ1つの作品にゆっくり集中して取り組めることに、幸せを感じています。以前は、ドラマ、バラエティ、歌……いろいろな現場のかけ持ちが多かったので。もちろん、そのお陰で今の自分がいるということも、ちゃんとわかってますけどね」