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医師にいうのは要注意「治療法は(わからないので)お任せします」

2018.09.21

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最善の治療法を選択するためのケーススタディー


イラストレーション/平松昭子

ケース(1)
医師が、手術を前提に詳しく説明をしている……。できれば切りたくないのだが


MRI検査で胸部動脈瘤が見つかったAさん(55歳)。直径は5ミリ程度で、自覚症状はありません。医師はパソコンの画面を見せながら、人工血管に置き換える手術法について詳しく説明し始めました。


しかし、Aさん自身は手術の必要性を感じておらず、痛いのが苦手なこともあって極力手術は受けたくないと考えています。

医師の説明内容も専門的で難しかったのですが、そのことよりも手術を前提に話が進んでいくことに大きな不安と不満を感じ、この流れをどう変えたらよいものかと戸惑っています。

【患者の心得】
「治療を受けないという選択肢」もあることを念頭に置く


どんな症状や病気にも、手術を受けない、薬を飲まないなど「治療を受けないという選択肢」が存在します。

ところが医師の説明は、患者さんは治療を受けるのが当然であり、受けないのであれば私のやることはないといったニュアンスで行われる場合が往々にしてあります。

その治療を受ける場合と受けない場合、それぞれのメリットとデメリット(つまり4つの情報)は、知っておくべき重要な判断材料です。

不安な気持ちを伝え、手術を受けない場合、今後どのような展開が予想され、病気とどうつきあっていけばいいかを聞いてみるとよいでしょう。

ケース(2)
糖尿病の薬をすすめられた。どれほど必要な薬なのか緊急度がよくわからない


健康診断で糖尿病が見つかり、かかりつけ医の指導のもと、生活習慣に気をつけているBさん(52歳)。しかし思うように効果が上がらず、医師から「そろそろ血糖値を下げる薬を飲み始めてはどうでしょうか。すぐに処方しますよ」と薬物療法を提案されました。

副作用や、飲み始めると長く続けなければならないことを考えると、薬に頼るのは最終手段としたいBさん。もうしばらくは食事療法と運動療法を頑張って血糖値をコントロールしたいのですが、病状の緊急度がよくわからず対応に迷っています。

【患者の心得】
医師の“おすすめ度”を5段階で具体的に聞いてみる


糖尿病、高血圧、高脂血症などの年単位で飲み続ける必要のある薬は、それほど焦って飲み始めなくても問題のないケースが多いものです。

ただ、せっかちな医師は少なくないので、自分がどれほど“のっぴきならない”状況なのかを確かめ、「少し考えたいので2~3週間先に決めても問題はないでしょうか」などと尋ねることです。

また、医師がその治療法をすすめる度合いを知ることも判断の目安になります。たとえば薬ならば、「どちらでもいい」を真ん中に「飲まなくてもいい」から「飲むべきだ」まで医師の考える必要度を5段階で聞いてみるとよいでしょう。

ケース(3)
ある質問が医師を困らせた


認知症で寝たきりの90歳の母親に、胃ろうによる人工栄養を提案されたCさん。判断に迷い、主治医に「先生の母親だったらどうしますか」と聞くと、困惑されただけで何も答えてもらえませんでした。

【患者の心得】
「親だったら?」と聞くのは避ける


医師には医療の専門家としての意見を聞くべきで、息子(娘)の立場の考えを尋ねることは医療の範囲外だといえます。多くの医師は答えることに躊躇するでしょうし、答えたとしても参考にはなりません。原則として避けたほうがいい質問です。

尾藤誠司(びとう・せいじ)先生

尾藤誠司先生

1965年、愛知県生まれ。
岐阜大学医学部卒業後、国立長崎中央病院、国立東京第二病院(現・東京医療センター)、国立佐渡療養所に勤務。
95年〜97年UCLAに留学し、臨床疫学を学び、医療と社会とのかかわりを研究。
総合内科医として東京医療センターでの診療、研修医の教育、医師・看護師の臨床研究の支援、診療の質の向上を目指す事業にかかわる。
著書に『「医師アタマ」との付き合い方』(中公新書ラクレ)、『医者の言うことは話半分でいい』(PHP)ほか。
お医者さまの取扱説明書
遠くの大病院より近くのクリニック患者が考える救急と医師にとっての救急の違いとは?初診・医師にはじめて会ったとき「どうしましたか?」にどう答えるか医師の「風邪ですね」に込められた本音「病名さがしの旅」という名の検査レール、本当にすべて必要なの?検査結果の数値に振り回されない患者の心得とは「隠れ病気」をどうとらえるか。“病気らしいもの”が見つかってしまったら医師が「大丈夫」というとき、いわないとき。医者の説明がちんぷんかんぷん、そのとき患者がすべきこと医師にいうのは要注意「治療法は(わからないので)お任せします」「薬」が増えるカラクリ、減らすコツ入院生活の不安・ストレスをできるかぎり減らすコツ家族が認知症。周囲と医師にできること医師はなぜ、代替療法をうさん臭いと思うのか親の“お迎え”が近づいたとき家族と医師で支える最終段階の過ごし方セルフケアと医療で対応する「具合の悪さ」セカンドオピニオンを誤解していませんか?できるだけ不安なく手術を受けるために、手術にまつわる確認事項エトセトラ「かかりつけ医」の役割と見つけ方親の介護に直面。医師に何を頼れるか?どこまでが介護で、どこからが医療かその“検索方法”は正しいか!? 信頼できる医療情報の求め方と生かし方医療は“役割分担”。共通の目標を持ち、各々のto-doを定める
取材・文/浅原須美 撮影/八田政玄 イラストレーション/平松昭子

「家庭画報」2018年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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