蓋や小皿、多様に使える「駿河竹千筋細工」のコースター

熟練の技が生み出す、ひご細工の精緻な美しさをコースターに込めて

ティータイムには、小皿としてチョコレートやお干菓子を盛って。

静岡の伝統的工芸品である｢駿河竹千筋細工｣の特色は、｢差す｣技法で形ができ上がっていくこと。かごやざるのように平たく割った竹を「編む」のではなく、枠となる竹の曲げ輪に小さな穴を開け、そこに細く削った丸いひごを差していくのです。


弥生時代の遺跡である登呂遺跡からは、竹のざるやかごが出土しており、静岡の地で古くから竹製品が暮らしに根付いていたことがわかりますが、虫かごや鳥かごなどとして、現在のようなひごを使った細工が行われるようになるのは江戸時代になってからのことといわれています。

駿河竹千筋細工の製作工程は、それ自体はいたってシンプル。枠となる竹を、胴乱と呼ばれる熱した金属の筒に当てて丸や角の形に曲げたのち、穴を開けて丸ひごを一本一本差し込んでいきます。



製作は、ひごを決まった細さに削ることから始まる。均一に削ることができ上がりの印象を左右する。撮影／岡崎良一



曲げ輪に開けた穴に、一本一本手作業でひごを差して組み立てていく。撮影／岡崎良一

しかし、熱した竹を思いどおりの形に曲げるにも、１ミリにも満たないような細いひごを等間隔で細かく差し込んでいくにも、機械にはなしえない熟練の技術が求められます。熱した竹は一度曲げれば元に戻せないので、歪みのない形に一気に仕上げなければなりません。

また、ひごを差し込む間隔にほんの少しでも狂いが生じれば、細いひごが密集しているからこそそのずれは大きく目立ち、たちまち美しさが損われてしまいます。

今回ご紹介したコースターも、その繊細でシャープな美しさが際立つのは、これ以上はないほどに細くしたひごを精確に差し込める、職人の卓越した技術があってこそといえるでしょう。

今回ご協力いただいたかた

みやび行燈製作所
杉山雅俊さん、貴英さん、茂靖さんの3兄弟で工房を営む。確かな技術と現代の暮らしに寄り添うデザインにより、国内のみならず海外にも多くのファンを持つ。撮影／岡崎良一

静岡市葵区四番町11-8
TEL：054（252）2581