「フリッツ ・ハンセン」の陶器のキャンドルホルダーに水をはり、短くカットしたジンジャーを生けた。コーナーに飾られた花は、シルバーの水盤の中にフラワーフォームを入れ、ダリアとグリーン、枝ものを高低差を大胆につけて挿した。ユニークな枝ぶりが強調された、インパクトのある個性的な花あしらい。Tips4
水盤を使ってインパクトのある花あしらいを
インドにはかつてラジャと呼ばれる豪族がおり、中でも権勢を持つ者をマハラジャと呼びました。インド滞在中に多美保さんが泊まったのは、そんなマハラジャの邸宅を利用した宮殿ホテル。
「文化と伝統を感じさせる重厚で豪華な空間は、あまりに鮮烈な印象でした。今日は、そのランバーグ・パレスの花あしらいをイメージしながら生けています」
キャンドルの足元に、短くカットしたジンジャーの花首をぎっしり並べた卓上花は、ホテルの大きな鉢いっぱいに浮かべられたプルメリアからインスピレーションを得たのだそう。
そして、鮮やかなダリアを低位置に、動きのある枝を中央に高く生けたトレースタンドの上の花は、ロビーで見たアレンジを参考に。
テーマカラーである赤やピンクの花材を用いて、水盤などの浅い花器に生けたインパクトのあるアレンジが、さらにお部屋をインドテイストに彩ります。
チェアにも工夫を凝らして、ダイニング空間全体に統一感を演出。コーディネートによって、まるでインドを旅しているかのような気分へと誘う、非日常の空間を作り出した。後ろ脚側は座面の下の両面テープで、前足側はタッセルの重みで、シートがずれない仕組み。「トミタテキスタイル」で生地を選び、椅子のサイズに合わせてオーダーした。シートは厚みのある生地のほうが座面になじみ、クッション代わりにもなる。Tips5
ファブリックマジックで家具の印象を一変させる
「コーディネートに合わせて家具を買い替えるのは難しいですよね。でも雰囲気を一変させたいなと思ったら、“布”の力を利用してみてください。きっと思っている以上に印象が変わるはずです」
インドスタイルに合わせて誂えたのは、ダイニングチェアの座面を覆うファブリックシートとクッション。ファブリックパネルと同じ、イギリス「ゾファニー」社のジャイプールシリーズのベルベットと、ざっくりとしたテクスチャーのグレーの生地で、表裏異なる柄で使えるように仕立てられています。
シートを敷いてクッションを置くだけで、イタリアンモダンデザインの見慣れたダイニングチェアが、全く新しい表情に。シートがずれないようにつけたタッセルが、ゴージャスな趣を奏でます。
「まさにファブリックマジックです」と微笑む多美保さん。“今あるものを最大限に生かしながら、新しい魅力を引き出す”。多美保さんが創造するコーディネートには、そんな知恵と工夫が宿っています。
横瀬多美保/Tamiho Yokose
インテリアスタイリスト
東京都生まれ。テーブルコーディネーター、インテリアスタイリスト。テーブルコーディネーターの故クニエダヤスエ氏に師事。女性誌や料理本、百貨店のディスプレイなどのスタイリングに携わる。新旧、和洋を自在に織り交ぜた、モダンでエレガントなコーディネートに定評がある。『家庭画報』とのおつきあいは30年近く。流行や時代の変化をしなやかに受け止めながら、幸福感漂う美しい暮らしを提案し続けている。2018年4月より、
コミュニティFM「渋谷のラジオ」にて、隔週水曜日12時30分~12時55分『渋谷のテーブル』にゲスト出演中。
『テーブルコーディネートから始まる 美しい暮らしのインテリア365日』 2019年10月2日発売!
『家庭画報』をはじめとする女性誌で活躍する、インテリアスタイリスト・横瀬多美保さん。ご自身の1LDKでの暮らしを1年間にわたり追った『家庭画報.com』の人気連載が、ついに一冊の本になりました。コーディネートの組み立て方、“自分らしい”空間の作り方も初公開! 今すぐ活用できる暮らしのtipsが満載です。