一緒に連れて行った娘は当時まだ7歳。
熱いお湯が苦手で、散々私に付き合わされ、温泉が嫌いになりつつあった娘でさえも、玉の湯はいたく気に入った様子だった。
小さい頃から、グルメだった娘が、珍しく嬉々として食事をしていると、「お嬢ちゃん、面白いものを見せてあげる」と、仲居さんが手を差し出した。そっと指を開くと、一匹のカブトムシ。
そんな遊び心とさりげない気遣いが至るところにあり、忘れられないステイとなった。
館内の木馬で遊ぶ7歳の頃の娘。10余年後に大学生となった娘(右)、変わらず同じ遊具があることの素晴らしさに感動する。そして今夏。
カナダの大学の夏休み中、彼氏とともに帰った娘を連れ、母と4人で久しぶりに玉の湯を訪ねた。
ますます観光地化され、大量の観光客でひしめき合う表通りの喧騒から、ほんの一歩入ったところにある玉の湯。この場所で、この静けさを今も変わらずに維持できているのは驚異的だ。
相変わらずの心地よさと、心の奥底に響く懐かしさ。
暖炉のある居心地の良い図書室で時間を忘れて本を読む母。