梅沢富美男さんの更年期
「歓声を支えに、67歳女形現役。医師も驚く若さは、舞台と、妻の健康管理のおかげ」
「女形は50歳まで」と思っていたが、まだいける!
舞台が明るくなり、花魁姿の梅沢富美男さんがパッと浮かび上がる。満員の客席からは割れるような拍手と歓声。大劇場で1か月公演を務め上げる人気と実力を持つ梅沢さんですが、意外にも「女形は50歳までと思っていた」といいます。
「僕が子どもの頃、50歳のイメージは“老人”。くたびれた女形などとんでもないと思っていました。ところがいざ自分がその年齢になってみると体も心も元気だし、客席も埋まる。65歳を過ぎても、まだいける。お客さまの声援をいただけるかぎり、役者に定年は訪れません」
実際、身体的にハードで不規則な生活を長年続けてきたにもかかわらず、梅沢さんは健康そのもの。テレビの健康番組で調べた内臓、脳、血管、骨、筋肉、免疫力のレベルはいずれも実年齢を大幅に下回り、医師が思わず「あなたは宇宙人だ」と驚いたとか――。
そんな“驚異の67歳”にも、50代半ばに心身の不調が訪れました。真冬なのに汗が出るくらいカーッと熱くなり、またスーッと冷めていく。手足がしびれる。台本が覚えられずイライラする。
すぐに「これは更年期だ」と気づいた奥さまは、男性ホルモンの働きを補い症状を和らげるハーブティーやアロマ、サプリメントを活用する更年期対策に着手。
「この半年間で仕事が完全にオフの日はゼロ。ハードな生活をこの年で続けられるのは妻の健康管理のおかげです」
舞台で踊る、演じる。いいホルモンが分泌する
内股で膝をゆるませ、肩を落としてつやっぽく立つ。手先の隅々に神経を行き渡らせて指を綺麗に見せるーー。
女形の舞踊は男性にはとても窮屈な動きです。人情芝居では、想像力を駆使して実経験のない役柄をリアルに演じる柔軟な心と迅速な頭の回転が求められます。梅沢さんにとっては舞台の仕事そのものが体と頭と心の鍛錬であり、若さの源です。
「花道を引っ込むときにも花があるのがいい役者。人生も同じ。体力・気力を高めつつ全力で働いた先に花のある引退がある。今の僕にはそのための“いいホルモン”がたくさん出ている気がします」