差し上げるかたのことを思いながら、はがきやカードを選ぶのは心弾むひとときです。ご紹介するメッセージカードは、大切なかたにこそ送っていただきたい、職人の思いのこもった一品です。
「寿」や「白雲紅日」の冠帽印を添えてお便りをお送りする柳原さん。「巻紙のように幅を広くして使うと、視線の上下が少なくなり読むかたの負担が軽くなります」。カードの大きさは一般的なはがきと同寸です。裏面は無地で、表面には細い枠線のみ入っているので、縦横どちらの向きにも使えます。
薄くすかれた和紙は、そっと手のひらにのせたくなる華奢な手ざわり。島根の石州和紙は、楮(こうぞ)を用いた和紙がそのルーツですが、今回は三椏(みつまた)を使用。手にとるとすべらかで、墨がにじみにくく、万年筆やボールペンはなめらかな書き心地が得られます。
和紙と枠線の色の組み合わせは5種類ご用意しました。すっきりとした胡粉色の和紙には、清々しい松葉色と緋色を枠線に。改まった印象を与え、慶弔にも向きます。優しい鳥の子色の和紙には橙色を、備長炭で染めた淡い薄墨色の和紙には赤紫色を合わせました。
そして、ひときわ目を引くのが鴇(とき)色の和紙に鼠色の枠線の一枚。ありそうでなかった、おしゃれで使い勝手のよい色合わせを発案してくださったのは、近茶流宗家夫人の柳原紀子さん。気持ちを届ける贈り物や手紙のアレンジを提案されています。
嬉しさを伝えられる鴇色のカードを二つ折りにし、お礼の品に添えて。写真のように気持ちを表すスタンプを押してアクセントにしても。「例えば鴇色のカードは、春は桜、秋は紅葉……と季節の情景を連想させてくれます。絵手紙や俳句、短歌をしたためるのもよいですね。相手のかたの心にそっと寄り添う、風格のあるカードができ上がりました」
お年賀や海外のかたへのお土産にもおすすめです。一枚ずつ丁寧に手すきした和紙のあたたかみが、お相手の心を優しく包んで長く手元においていただけることでしょう。
一緒に考えてくださったかた
柳原紀子(やなぎはら・のりこ)さん
江戸料理を伝承する近茶流宗家、柳原一成氏夫人として、東京・赤坂の「柳原料理教室」を支えるかたわら、手紙や贈り物など、おつきあいにまつわるマナーについて、歳時や歴史とともに教える。近茶文庫 文庫長。