豊かな土地と水が育む、何百年ともつ丈夫な石州和紙
半紙判の白い和紙でカードをたとう包みにし、細いこよりを結べばさりげない贈り物に。中国で確立した手すきの製紙技術は、日本には610年に伝来したとされ、以来各地で和紙の生産が連綿と続いてきました。905年に成立した『延喜式』には、和紙の産地として島根県西部の石見地方の名が登場しています。
地元で栽培される石州楮を使った石州半紙は何百年もの保存が可能といわれるほどに強靭です。江戸時代には、大坂の商人たちは大切な大福帳(帳簿)に石州半紙を用い、火事の際には井戸に投げ込みました。石州半紙は水に浸されても破れることなく、大事な情報を守ってくれたのです。
現在では文化財の修復に多く使われています。石州和紙のこの丈夫さは、石州の土壌と水によって育まれる石州楮の強さと、紙をすく際の動きに起因します。
楮とトロロアオイと水を混ぜた中にすき桁を入れて掬い上げ、前後にのみ揺することで繊維の方向が整い、破れにくい和紙に仕上がるのです。
和紙をすく工程は3段階からなる。写真は、すき桁を前後に揺すって繊維を絡ませながら層を作る「調子」。すき上げられた和紙を、簀から紙床(しと)へ移動させる。一晩水をきり、1枚ずつはがして乾燥させる。いちばん下が石州半紙。備長炭で染めて透かしを入れたり(中)、和紙をたたんでつけ染めする(上)など、久保田さんはさまざまな技法に挑戦。こうした石州和紙本来の力強さを受け継ぎながら、時代に合わせてさまざまな用途に使えるように工夫をしてきたのが、今回の製作に携わってくださった久保田 彰さんです。
和紙を使う作家たちと交流する中で、丈夫であることはもちろん、使い手が必要としている和紙のあり方を模索してきました。
石州らしい伝統を守りながら、ほかにはないモダンなメッセージカードは、久保田さんの熱意と心意気が込められた逸品です。
今回ご協力いただいたかた
石州和紙 久保田
久保田 彰さん
石州和紙の伝統を伝え継ぎ、豊富な知識と旺盛な好奇心で、石州和紙の新たな可能性を求め尽力する。次代を担う若手職人の育成にも注力。島根県浜田市三隅町古市場957-4
TEL:0855(32)0353
家庭画報×石州和紙カードのご購入方法
「カード」(5種1枚ずつ5枚、封筒1枚のセット) 2100円(税・送料別)。購入をご希望のかたは、直接「石州和紙久保田」にご注文ください。ご注文は、氏名・住所・電話番号・注文個数を明記のうえ、FAXまたはメールのみにてお願いいたします。
FAX/0855(32)2473
メール/kubota@sekishu.jp
※ご注文が確定し、ご入金いただいてから製作するため、商品のお届けにはお時間がかかります。また、商品は一つ一つ手作りのため、仕上がりが写真とは少々異なる場合があります。 表示価格はすべて税抜きです。
撮影/本誌・西山 航
「家庭画報」2018年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。