旬を愛でる花旅・庭めぐり(51)「コスモス寺」と呼ばれるコスモスの名所をご存じですか?〜奈良・般若寺
白〜ピンクの優しいグラデーションを描くコスモスの群生越しに本堂を眺める。華やかながらも和の趣が感じられる新鮮な景色。スケールの大きなコスモスの名所が全国にたくさんある!
9月のお彼岸頃から咲き始めたコスモスが、各地でそろそろ満開を迎えています。秋の澄み渡る空気によく似合う透明感のある美しい花を愛でに出かけてみませんか。
東京生まれの私にとってなじみ深いのが「国営昭和記念公園」のコスモス。約550万本が咲き乱れる景色を見ていると心の中まで澄み渡って晴れ晴れした気分になります。新宿駅から西立川駅まで約40分。
思い立ったらすぐに出かけられ、季節ごとの自然に触れられるのが、この公園の魅力です。
関東エリアでもうひとつおすすめなのが、千葉県柏市にある「あけぼの山農業公園」です。ここには本格的なオランダ風車があり、その前に広がる花畑には約100万本のコスモスが咲き誇ります。
春のチューリップの景色とはまた異なる魅力があり、風車を背景にフォトジェニックな景色が撮影できます。
関西では京都府亀岡市にある「京都・丹波 夢コスモス園」がスケールの大きさでは最大級。4haに約800万本のコスモスが咲き誇ります。
ここのコスモスは20品種もあり、さまざまな花形、花色が楽しめるのもうれしいところです。
さて、全国各地に数多くあるコスモスの名所がスケールの大きな景色を魅力としている中で、秋の華やかな風情を感じられる少し異色の、おすすめの名所があります。
奈良県奈良市の北部にある般若寺。このお寺は別名「コスモス寺」とも呼ばれています。
お寺の境内が15万本のコスモスで埋まる景色に心澄む
本堂の周辺には江戸時代に設けられた「西国三十三所観音石仏」がある。コスモスに囲まれたこの時期の観音石仏は、より表情が穏やかに見え心が和む。真言律宗の寺院、般若寺の歴史は古く、飛鳥時代に開かれ、平安時代には学僧が集う学問寺として知られていました。
関西花の寺二十五カ所の第17番に指定されていて、春夏秋冬、境内に花が絶えない美しいお寺です。
とくに秋のコスモスの時期には境内一帯に約15万本もの花が次々と咲き、華やかで美しい景色で参拝者を魅了してくれます。
ピンクの濃淡に白、クリーム色と、優しく透明感のあるコスモスの花色越しに望む本堂や、約14mの高さがある石塔の景色を眺めていると、自然に心が落ち着き、自分の心の中までコスモスのような透明感のある色に染まる気分になります。
重要文化財に指定された十三重石宝塔は日本を代表する石塔のひとつ。コスモスの花越しに眺める、青空を背景にした石塔の凜々しく美しい姿はとてもフォトジェニック。社寺の秋の境内といえば、キクをイメージしますが、こんなにもやさしい気持ちにしてくれるコスモスとお寺のコラボレーションはあまり見たことがなく、とても新鮮な印象です。
般若寺にコスモスの花が咲くようになってからすでに約50年の年月が経っているそうで、毎年ボランティアが集い、タネから育苗し、植え付け後も水やりや草抜きなどの管理を行っているそうです。
この美しい景色は多くの人の手と無欲の心が生み出していることを実感し、素直に感謝の気持ちが湧いてきました。
最近ではユニークな花形のコスモスも登場しています!
さて、コスモスの花旅をより深く楽しむために、コスモスの品種についての情報をご紹介しておきます。
スケールの大きなコスモスの名所で一般的に利用されているのは、花が大きく草丈も高めの‘センセーション’という品種です。ピンクのほかに白花やダークな赤花もあります。
コスモスの景色を生み出すのに欠かせない景観用の品種‘センセーション’。花が大きく、草丈も1mを超す。最近ではコスモスの品種が増え、ユニークな花形も登場しています。たとえばくるっと花びらが巻いた‘シーシェル’や、
花びらの一つひとつがくるっとカールしたユニークな花形の‘シーシェル’。アップでじっと見ていたくなるかわいらしさ。「これもコスモス?」と疑うような八重咲きの‘ダブルクリック’、
コスモスはすっきりした一重が定番。でも最近では繊細な八重咲きの品種も登場し、人気も高まっている。これは八重咲きの人気品種‘ダブルクリック’シリーズのローズボンボン。またクリーム色の花色も登場。ちなみにこれはキバナコスモスとは異なり、コスモスの黄色品種ですのでお間違いないように。
透明感のある淡い黄色の品種‘イエローキャンパス’は秋の澄んだ空気感によく似合う。写真でご紹介しますので、コスモスの名所を訪ねたら探してみてください。ただ景色としてコスモスを眺めるより、個々のコスモスに注目して品種を確認するほうが、より深くコスモスを堪能できると思います。
一重で丸みのある愛らしい花形の‘ソナタ’。白〜濃淡ピンクまでの色幅が楽しめる。花びらに縁取りがあったり、絞りの斑入りだったり、多彩な表情が魅力の‘ピコティ’。白から濃ピンクまで色幅がある人気の品種。ピンクや白のパステル系だけでなく、こんなに色濃い品種も登場。‘ダブルクリック’シリーズのクランベリー。シックな色合いが秋らしい雰囲気。絶対に手に入れたい!愛らしいコスモスのお守り
般若寺のコスモスお守り。このかわいらしさ、絶対に欲しくなる〜! 裏地もちりめん生地でていねいな作り。さて、話は再度、般若寺へ戻ります。
般若寺を訪ねたら、絶対に購入して欲しいのが、ちりめん生地でできたコスモスの花の形のお守りです! それも‘センセーション’‘ピコティ’‘イエローキャンパス’と品種ごとに色が異なっています。
1体700円。「コスモス寺」にしかないとても愛らしいお守りです。
ただし、品種を選ぶことはできず、どれが入っているかは開けてみてのお楽しみ。大丈夫ですよ、どれになってもとてもかわいらしくて大満足ですから!
どんな御利益があるお守りかというと「コスモスのような素直な心をはぐくみ、運勢を上昇させ、繁栄をもたらす」だそう。
「コスモスのような素直な心」、ずっと持ち続けていたいものです。