廣木監督の演出はほとんどなし。周りの人がうらやましい!?
橋本さんの本作のお気に入りも、実は“あたし”のシーン。
「“あたし”が夜明けの街を一人で歩いているシーンがあるのですが、原作でもその場面が一番好きで。原作は真冬だから雪も降っていて、鼻にツーンとくるような空気感みたいなものを感じたんです。映画を撮ったのは夏前だったのに、そのシーンはちょっと深々とした冷たさのようなものが画面から伝わってきて。本を読んで思い描いていた情景に限りなく近かったことの感動がすごくありました」
印象的なシーンを作り出した廣木監督。橋本さんには撮影に入る前に、勝手にやってくれていいと告げたそう。実際に撮影が始まってからも「監督から演出はほとんどされなかったんです。周りのみんなが演出されているのを見て、いいなぁって(笑)。だから、自分で考えて演じて、という感じでした」と橋本さん。ただ、脚本と少しニュアンスが変わったという、最後の椎名(成田 凌)とのシーンでは、監督からの提案を聞いて「最初から脚本を読んで考え直したときに、その提案がバチッとはまって。ずっとちゃんと見てくれていたんだ、監督を信用していいんだと思いました(笑)」。
廣木監督が勝手にやってくれというのは、「ある意味、役者を信頼してくれているということにもなるんだと思います」と橋本さん。