きものダイアリー

中村児太郎さんが語る、歌舞伎座『芸術祭十月大歌舞伎』

2018.10.04

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歌舞伎新世代がナビする「きもので観劇」其の十

中村児太郎さんが語る、歌舞伎座『芸術祭十月大歌舞伎』

「多くの先輩からご指導を受けることができた日々を感謝するばかりです」


大人びた佇まいと細やかで丁寧なお芝居で、舞台を重ねるごとに大きく成長を続けている中村児太郎さん。先月の「秀山祭九月大歌舞伎」では女方の大役であり歌舞伎の“三姫”の一つである『祇園祭礼信仰記 金閣寺』の雪姫をつとめました。

児太郎「『金閣寺』の雪姫は、成駒屋にとって大切なお役。また、七之助の兄が演じた時も、僕は新春浅草歌舞伎に出演していた月だったのですが、1日だけ休みの日があったので、歌舞伎座で拝見することができました。すごく素敵で、七之助の兄の年までに僕もできるようになるのかな……などと思っていたのですが、まさかこんなに早くやらせていただけるとは思っていませんでした」。


初日が開いてからは、舞台を撮影して終演後に毎日チェックするという熱心な勉強ぶり。雪姫は“三姫”の一つですが、武家娘ではありません。絵師の家に生まれ、元は慶寿院尼の腰元だった人。夫の直信と人目を忍んで会っていたような過去もあり、児太郎さんが楽屋で鏡台の脇に置いて折に触れ目を通しているという五代目中村歌右衛門の著書『歌舞伎の型』にも “色気が必要”と書かれています。

名刀倶利伽羅丸をかざすと龍が現れたり、縛られた雪姫が桜の花びらと涙で描いた鼠が動き出して窮地を救うなど、ファンタジックな要素もある物語。

児太郎「雪姫は、もちろん縛られた後の形や気持ちも重要ですが、そこにいくまでの一つ一つの動きや台詞、心の表現の仕方がとても大切で難しかったです。実際に演じてみて上手くいったかなと思っても、終演後に映像を確認すると先輩方のお芝居とは天と地の差があり……。それでも一日一日、25日間、とにかく一生懸命に舞台に立ち続ける日々でした」。

この舞台で病気療養中だったお父様の中村福助さんが復帰を果したことは、歌舞伎ファン皆にとっての大きな喜びでした。

児太郎「座頭である中村吉右衛門のおじさまをはじめ、諸先輩方のご賛同をいただけたことで、父が倒れてからずっと、いつかまた一緒に舞台に立ちたいと願っていた夢を叶えることができました。初日に父が登場した場面では2分間も拍手が鳴り止まず、ありがたい思いでいっぱいになりました」。

お父様が休演していた5年近い日々、真摯に、前を向いて歩んできました。

児太郎「父が倒れてからは、多くの先輩方から色々な教えを受ける機会に恵まれました。たくさんの方とご一緒させていただけたのもありがたいことでしたし、こういう状況にならなかったら、今の僕はないかもしれません」
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