「ラグビーW杯や東京オリンピックに向け 歌舞伎やきものの魅力を世界に拡散できれば」
そんな児太郎さんのお母さまの、きものと帯をご紹介いただきました。
平成12年に児太郎さんが襲名した際に誂えたきもの。児太郎さんの紋である“児太郎雀”が、梅とともにあしらわれています。
こちらは、五代目歌右衛門が描いた竹と雀の絵をもとに、児太郎さんが襲名した際にお配りものにした扇子と、同じ柄の帯。
帯は、お母様がご結婚された時に、児太郎さんのお祖父さまに当たる故・七代目中村芝翫さんから贈られたもの。当代の芝翫さんの奥さま(女優の三田寛子さん)とお揃いだそうです。
児太郎「先日も僕の大学の比較芸術学科の後輩たちがきもので歌舞伎を観に来てくれました。嬉しかったですね。きものでの観劇は着る人も周囲の人も気持ちが華やぎますし、好きな役者さんの名前や紋、演目にちなんだモチーフをきものや帯にあしらえば、さらに楽しみも増すのではないでしょうか。10月の公演なら中村屋の紋である角切銀杏にちなんだ銀杏の模様などもいいですよね。五代目歌右衛門の時代の女方さんには、道ですれ違った素敵な装いの女性に声をかけ、そのきものを譲り受けて舞台で衣装として使用した、といった話を聞いたことがあります。替わりに呉服屋さんで好きなきものを買っていいよ、と言ったというのですから、スゴい話ですよね」
海外の方と話して、改めて歌舞伎やきものの魅力に気づいたこともあるそう。
児太郎「“日本にはこんなに素晴らしい文化があるのに、なぜみんな西洋のものが好きなの?”と聞かれたこともあります。また、ダンスをやっている友人は海外に出たことで、もっと日本の文化を知っておけば良かったと言っていました。来年はラグビーW杯が、その翌年には東京オリンピックがあり、世界中の方々が歌舞伎やきものに興味を持つ機会も増えると思います。僕はラグビー部出身なのでラグビーW杯は特に気になっているのですが、たとえばマスコットキャラクターの“レンジー”をきっかけに、歌舞伎の『連獅子』って何? という人も増えるかもしれません。SNSなどで気軽に情報を得ることもできる時代ですから、少しでも歌舞伎やきものなど日本のいいものに触れていただき、たくさんの方がその魅力を拡散してくださるようになったら嬉しいですね」
歌舞伎座 芸術祭十月大歌舞伎 十八世中村勘三郎七回忌追善
撮影/西山航 構成・文/清水井朋子 撮影協力/歌舞伎座