お医者さまの取扱説明書 総合内科医の尾藤誠司先生に、患者と医師の良好コミュニケーション術を教わります。
記事一覧はこちら>> 「薬だけでおなかがいっぱい。ご飯が食べられない」と訴えたら、食欲増進の薬を出された――。
こんな冗談のような話が現実に起きています。つい薬を増やしがちな医師の思考回路を知り、薬の種類と量を必要最低限に抑えるための対応術を伺います。
尾藤誠司先生独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 臨床研修科医長・臨床疫学研究室長
薬は「3種類」しかない。カテゴリーに分けて整理する
血圧と血糖値とコレステロール値を下げる薬が処方され、副作用対策でむくみや便秘を解消する薬が加わり、眠れないと訴えると睡眠薬が足される――。薬は増える一方です。
その理由を尾藤誠司先生は、「手術という治療手段を持たない内科系の医師は、(生活習慣のアドバイスもするけれど)薬を出すことで患者さんを治しているという感覚に陥りやすい」と解説します。
「そのため、前回出した薬が効かなかったり、新たな症状を訴えられたりすると、薬をプラスして目の前の患者さんの困り事を何とか解決しようと考えるのです。
そこでもし患者さんに“薬は飲みたくない”と単刀直入にいわれてしまうと、“何しに来たの?”と感じてしまうことが、ないとはいえません」
処方されるがままに薬を受け取っておきながら飲まないのは、経済的にも無駄ですし、医療的にも問題あり。ではどうしたら?
「医師と合意のうえで必要最低限の薬にとどめるにはちょっとしたコツがあります。“薬は3種類しかない”ことを知り、カテゴリー別に整理するのです」
1つ目は大きな病気にならないための薬。血圧やコレステロール値、血糖値が高いなど慢性的な疾患を抱えているときに、それが進行して心臓病や脳梗塞、糖尿病などの重い合併症を起こすことを予防するための薬です。
比較的長いスパンで飲み続けることが多いので、緊迫性次第でスタートの時期を先延ばしにしたり、薬の種類や量を減らしたりできる可能性があります。
2つ目は病気そのものをやっつける薬。細菌やウイルスを殺す抗生物質や抗がん剤などで、医学的必要度はかなり「高」。副作用や使用期間を確かめたうえで医師の指示に従ったほうがいい薬です。