多くの飲食店で賑わう東京ミッドタウン日比谷の中でも、ひときわ格式ある店構えで目を引くのが「南禅寺 瓢亭 日比谷店」です。
ビルの中とは思えない落ち着いた佇まい。こちらは京都本店とは異なる、初の割烹スタイル。熊本県産黄金畳が敷かれたカウンターの中で、15代目の髙橋義弘さんがにこやかに迎えてくれます。
この日訪れたのは、帝国ホテルアーケード内にある日本で最も古い宝飾店「ウエダジュエラー」の4代目、植田友宏さんと奥さまの麻里さんです。新潟の料亭を継いだ大学時代の親友が京都・瓢亭で修業していたというご縁もあり、ご主人と会話が弾みます。
植田友宏さん(うえだ・ともひろ) (写真中央)
日比谷の老舗宝飾店「ウエダジュエラー」の4代目。同店は1884年に銀座で創業。1923年に帝国ホテルライト館に出店。以来、1世紀近く日比谷の街とともに歩んできた。顧客リストにはベーブ・ルースやソフィア・ローレンなど世界各国のVIPや著名人が名を連ねる。「先代の父・新太郎は創業100周年の記念事業として、社史ではなく日比谷の歴史と現在をまとめた本を発行するほど、この街を愛していて、狭いエリアにさまざまな表情がある日比谷を常々『いちばん古くて新しい街』と申しておりました。こちらの瓢亭さんは、伝統を守りながら、京都とはまた違う形で時代に合ったものを築いておられます。同じように、私たちも新しいことに挑みながら、身に着けてくださるお客さまのさまざまな笑顔を思い浮かべ、精魂込めて美しいジュエリーを作り続けています。どこか共通するものを感じますね」
麻里さんの胸もとには、レコードと音符がデザインされたブローチが美しく輝く。華やかな“日比谷ブロードウェイ”をイメージして作られた、この秋の新作。東京の中でもいち早く西洋化、近代化しながら、比較的ゆっくりと変化し、古いものも新しいものもやさしく迎えてくれる安心感、包容力が日比谷の魅力だと話す植田さん。髙橋義弘さんもまた、緑豊かな日比谷公園の眺め、低層の自然な開放感に心が落ち着くと語ります。
互いに老舗を継いで切磋琢磨し、ゆっくり進化を続けるお二人――日比谷にまた一つ、新しい出会いが生まれました。