――少しずつ書き上げられていく脚本を稽古場で待つというのは、どんな気分ですか?
「新聞の連載小説を読む感覚に近いかもしれません(笑)。舞台『ムサシ』で井上ひさし先生とご一緒した時もそうでしたけど、少しずつ届く脚本が面白いからワクワクしながら待っていられるんです。もちろん、稽古を積み重ねてブラッシュアップしていくのは大事なことですが、KERAさんが書く世界と、稽古場で形にしていく世界が同時進行で生まれていく貴重な現場にいられる幸せや喜びは、確実にあるなと今回も感じています。他の皆さんが稽古されているところを、客観的に見る時間も持つことができてよかったです」
2012年の『軽蔑』で高崎映画祭最優秀主演女優賞、2016年の『イニシュマン島のビリー』『母と惑星について、および自転する女たちの記録』で読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。――KERA作品の魅力をどんなところに感じますか?
「破壊的だったり、なるほど!と思うような一言が、台詞にバッと入ってくるところがたまらないです。『社長吸血記』(2014年、ナイロン100℃公演)の時も、“あり得ない!”と言った人に対して“あり得るんだよ、大抵のことは!”と返す名台詞があって、そうだよな、大抵のことはあり得るなと思いつつ、いつも笑っちゃって。面白さと気づきが同居しているところ、しかも何かを馬鹿にした笑いじゃないところが素敵だなと思います。大半の人にとってはどうでもいいかもしれないけど、その人にとってはすごく大事なことも描かれていて、KERAさんの優しさを感じます」