3代目店主が生み出した里志ぐれ
『京のお菓子』のなかで、大村しげさんは先斗町駿河屋の秋のお菓子を推薦しています。それが50年以上前から作られている銘菓「里志ぐれ」。
「里志ぐれ」。底から2~3mmの場所に切り込みを入れ、底板代わりの竹の皮を差し入れています。食べるときに竹の皮を抜き取れば、文字どおり筒抜けとなり、つま楊枝で中身がスムーズに取り出せるというわけです。購入の際は要予約。1個410円(税込み)。「里志ぐれ」は、先代の3代目店主・橋本史郎さんが考案した栗入りの羊羹で、栗の季節の到来とともに店頭に並びます。栗と羊羹の組み合わせは和菓子の世界では珍しくありませんが、里志ぐれは、竹の容器に入った京都らしい情緒豊かな見た目から、すぐに人気となりました。
「昔は、お茶屋さんや高級なバーへのおみやげに買っていく人が、いくらでもいました」と橋本さん。瑞々しい笹の葉に包まれた青竹の器。包みを開くと大粒の栗が顔を覗かせるのですから、お茶屋遊びが盛んだった時代には、さぞや喜ばれたことでしょう。
「里志ぐれ」は贈答用に籠入りにすることもできます。籠は別売りで350円(税込み)。大村しげさんは「里志ぐれ」について「丹波の栗とあずきの風味を生かしたやわらかい羊羹で、(中略)籠入りを手土産にして、あの人をたずねてみようかと、旧友の顔を思い浮かべたりして」(『京のお菓子』)と紹介。
大粒の丹波の栗が魅力
今も昔も「里志ぐれ」に使われている栗は丹波産。また、小豆は北海道産の上質なものが選ばれています。「丹波の栗はあっさりした風味が魅力で、羊羹は甘さ控えめにしています。里志ぐれは予約制で、丹波の栗がなくなれば、(その年は)終了。いつも年内にお歳暮用を出荷したら終わりです」(橋本さん)。
大粒の丹波の栗はお店で甘露煮されてから、羊羹の中へ入れられます。