フィギュアスケート愛(eye)とは……本誌『家庭画報』の「フィギュアスケート」特集を担当する、フリー編集者・ライターの小松庸子さんが独自の視点で取材の舞台裏や選手のトピックスなどを綴ります。
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2018年10月6日のJapan Openにて披露した《ダブル・ビル》。2つの異なるクラッシックの作品を立て続けに上演する新しい試みでしたが、ピアノとヴァイオリンの音色をステップやエッジワークで巧みに滑り分ける様はさすがのパフォーマンス。写真/築田純/アフロスポーツいつか、この日が来てしまうのではないか……。心のどこかでそんな予感もしていましたが、遂に現実になってしまいました。2018年10月6日、町田 樹さんがフィギュアスケートの実演家を引退しました。
取材を通して感じたフィギュアスケーター・町田 樹という存在
現役からの引退と早稲田大学大学院スポーツ科学研究科への進学、研究者への志を表明したのは2014年12月28日、全日本選手権大会でのこと。同年に行われたソチ五輪や世界選手権を通してその滑りに魅了される人々が増え、“町田 樹”というスケーターの存在と名前を世界中に知らしめた矢先のタイミングでした。
競技者・町田 樹さんの独創的なスケーティングをこれからも楽しませてもらえるのだろうと思い込んでいたので、不意をつかれた引退宣言の衝撃にしばし呆然となったのを昨日のことのように覚えています。
でも、少し冷静さを取り戻したのちに取材メモなどを読み返してみると、彼の中ではかなり早い段階から人生設計の計画がしっかり練られていたのだということに気がつきました。
『家庭画報』2015年4月号「氷上の哲学者、町田 樹に捧ぐ」という特集にもその時の心境を書き記しましたが、引退表明を聞いて、なぜ今?と思う一方で、取材中に聞いた言葉に深い意味が隠されていたことに思い当たったからです。