氷上総合芸術の可能性に挑戦し続け、観客を魅了した町田劇場
そして言葉通りに現役を引退し、早稲田大学大学院へと進学して「アーティスティックスポーツ」の研究を始めた町田さん。
現役を引退したことで、もしかしたらもう二度と氷上で見ることは叶わないのではないかと失意の底に沈んでいたフィギュアスケートファンの前に、2015年、研究者兼プロスケーターとしての新たな姿を見せてくれました。年に数回とはいえ、アイスショーで出逢うたび出演するたびに次々と伝説を作ったといっても過言ではありません。
Japan Openでの演技後、「パフォーマンスしながら、25年のスケート人生が走馬灯のように蘇っていた。多くの方々に支えられながら、今、自分の足でここに立てていることを誇りに思う」と満員の観客、関係者の皆さんに熱く感謝の言葉を伝えました。写真/築田純/アフロスポーツ氷上へのカムバック作品となった《継ぐ者》 。
6分弱もあるシューベルトの「4つの即興曲 作品90/D899」の曲を切らずに使い、競技で使われる6種類のジャンプ全てを織り込んでいる意欲作でした。アイスショーでまさかの6分間演技!
でも、競技の場ではなく、美と芸術を堪能できる場であるアイスショーだからこそ表現できるのだ、挑戦さえすれば新しい世界の扉を開くことはできるのだ、ということを町田さんが身をもって教え、さまざまな可能性がある扉を開いてくれた瞬間だったと思います。
ここから、彼が理想として掲げる「総合芸術としてのフィギュアスケート」を体現した町田劇場が開幕されました。
《あなたに逢いたくて(Missing You)》(2016)、《“Ave Maria”by Chris Botti》(2016)、《Don Quixote Gala2017:Basil’s Glory》(2017)、《Swan Lake:Siegfried and His Destiny》(2017)、《ボレロ:起源と魔力》(2018)。
研究テーマの実践の場として作品を発表する意義はあるとしても、膨大な勉強量に睡眠時間の確保さえままならなかったのではと思われる日々の中で、異なるテーマ性の新作を企画し、実演しきった計画力と実行力、意思の強さ。本当に敬服します。