1シーンを1カット、長回しで撮影するのが宅間組の基本スタイル
台本上ではきちんとセリフがあったという冒頭とラストのシーン。「画と音楽で見せられる情報で勝負するというわけじゃないですけど」と、あえてセリフをなくしたといいます。その2つのシーンのうち、冒頭は宅間さんいわく「親側からすれば子供との、子供側からすれば親との、よくある原体験」。そこからセリフが消えたことによって、観客はまるで自分の記憶をたどっているかのような感覚になってしまうのかもしれません。
宅間さんには、フィックスの1カットというこだわりも。フィックスとは、カメラを固定して撮影すること。固定カメラで1シーンを1カットで撮るのが宅間組のスタイル。
「美術も切り返すこと(※1)を考えなくていいから1方向に集中できるし、照明もそう。だから、画の重みが全然違っていて、そこで役者の感情が途切れない芝居が続いていくので、1カットで悪いことは一つもないんですよ。カットを割りたがる理由にアップ(寄り)があるんですけど、それは自然な流れがもしあるのであれば役者が動けばいいんじゃないかって。でも、改めて見直すとけっこう動いてるんです。フィックスで、って現場では言ってたつもりなんですけど、カメラマンが動きたがるんで(笑)」
※1 例えば、人物Aの正面から撮影したあと、今度はAの背後から同じシーンを再度撮影する方法。冒頭のシーンは、「まさに僕の家の原風景。たぶんお子さんが小さい頃って、みんななんか似たような体験をしていたりするんですよ」。