“肥満は万病のもと”放置せずに適切な対処を
関西医科大学附属病院健康科学センターは2000年に「肥満外来」を開設し、BMI(体格指数)が30以上の肥満者に対し、全国でも珍しい認知行動療法をベースにした減量指導に取り組んでいます。
この方法は従来の減量指導と比べて約2倍の減量効果があり、しかもリバウンドしにくいことが明らかになっています。その実力は口コミで広がり、同外来には何をやってもやせられなくて困っている高度肥満の人たちが大勢やってきます。
「肥満がやっかいなのは健康障害を引き起こすことです。メタボリックシンドロームに象徴されるように、内臓のまわりに脂肪がたまる内臓型肥満は血糖や血圧、コレステロール、中性脂肪を悪化させ、動脈硬化などのリスクを高めます」と健康科学センター長の木村 穣先生は指摘します。
日本肥満学会が作成した『肥満症診療ガイドライン2016』では、健康障害の原因となる場合を「肥満症」と定義し、単なる肥満と区別して積極的に減量指導や管理を行うことを推奨しています。
さらに同ガイドラインでは、肥満が原因となる健康障害として耐糖能障害(血糖異常)をはじめ、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患(心臓病)、脳梗塞、非アルコール性脂肪性肝疾患、月経異常、睡眠時無呼吸症候群、運動器疾患(膝痛、腰痛)、肥満関連腎臓病の11疾患を挙げています。
「まさに“肥満は万病のもと”。長く放置しておいてはいけません」と木村先生は警告します。そして「肥満症患者の大半は、今の体重から5パーセント減量すれば健康度がよくなることが医学的にも証明されています」と説明します。
とはいえ、いったん増えてしまった体重を減らすのはそう簡単なことではありません。食べることを我慢して一時的に体重が減ったとしてもリバウンドし、理想体重をキープするのは難しいものです。
リバウンドするたびに太る人も少なからずいます。「なぜなら元に戻った体重を減らそうと再び減量に挑戦しても、運動をしないと筋肉量が減り、それに伴って基礎代謝量も低下し、体が太りやすくなっているからです」。
木村先生によると、筋肉量が1キロ減ると基礎代謝量は1日50キロカロリー低下するため、動かずにじっとしているだけで体重が年間に2.6キロ増える計算になります。