大原のしば漬けはなすが主役
大手食品メーカーが大々的にテレビCMを展開したことから、しば漬けといえばきゅうりのイメージをお持ちの方が多いようです。しかし大原のしば漬けは、なすが主役。そのまま、もしくは刻んで、好みで醤油をかければ美味しく食べられます。酒好きのなかにはそのままで、肴にするという方もいるといいます。
「京都の三大漬物といえば、しば漬け、すぐき、千枚漬けです。なかでも千枚漬けは材料を薄く切って、昆布と酢を用いて作る、いわば贅沢品。三大漬物と一口にいっても、素朴な生活に密着したしば漬けとは成り立ちが違います。しば漬け用の余った紫蘇は家庭の梅干し用や紫蘇ジュースに応用が可能。捨てるところがありません」と統さんからも豆知識を聞かせてもらいました。
漬け蔵にて。四斗樽(72リットル)に入ったしば漬けは50~60kgの重しをのせた状態で発酵させます。重しの多くはなんと、1978年に京都市電が廃止された際に払い下げられた路面の敷石でした。 調味料としても使えるしば漬け
「しば漬けは発酵食品」と語る統さんは、自然な酸味の強さを調味料として生かす様々なアイディアを発信中です。
●鍋のあとの雑炊に加えればさっぱり味に。
●オリーブオイルとの相性がよいので、パスタに入れる。
●豆腐にしば漬けをのせて、塩とオリーブオイルをふりかける。こんなユニークな食べ方もできると聞いて、驚きました。まだまだ、楽しみ方が広がる、京都・大原のしば漬け。大村さんのようにお茶漬けのお伴にはもちろん、しば漬けを生かした新しいレシピに挑戦してみるのも楽しそうです。
Information
志ば久(しばきゅう)
京都府京都市左京区大原勝林院町58
川田剛史/Tsuyoshi Kawata
フリーライター
京都生まれ、京都育ち。ファッション誌編集部勤務を経てフリーライターとなり、主にファッション、ライフスタイル分野で執筆を行う。近年は自身の故郷の文化、習慣を調べるなか、大村しげさんの記述にある名店・名所の現状調査、当時の関係者への聞き取りを始める。2年超の調査を経て、2018年2月に大村しげさんの功績の再評価を目的にしたwebサイトをスタートした。
http://oomurashige.com/ 取材・文/川田剛史 撮影/中村光明(トライアウト)