入院中のストレスを減らすためのケーススタディー
ケース(1)
病棟担当の医師が、若すぎて不安。入院中も主治医にみてほしいのだが
初期の胃がんの手術で入院したAさん(52歳)。ベテランの主治医は一向に顔を見せず、担当医になったのは初対面の20代の医師。
「こんなに若くて大丈夫かしら。主治医にみてほしいのに」と心配で仕方がありません。しかも、親子ほどに年が離れているのに「大丈夫?がんばろうね」などと友達口調で話しかけてくるのが苦手で、会話すらストレスに感じています。
とはいえ、病院の方針や都合もあるだろう、入院中に病気以外のことで注文をつけるのはわがままなのだろうか、と我慢しながら入院生活を送っています。
【患者の心得】
情報は共有されているので安心を。意図を汲みつつ思いを伝えようベテランの医師は経験や技術を要する手術や外来を受け持ち、若い医師は体力を必要とする病棟を担当することが多いのが現状です。
しかし患者さんの情報は電子カルテで共有されており、治療方針は主治医主導で進められているので、心配は無用。主治医に直接相談したい場合は、その旨を伝え時間を作ってもらいましょう。
友達口調は患者さんを和ませようという善意の表れです。その意図を汲んだうえで「気持ちは嬉しいのですが、私は普通に“ですます調”で話すほうが落ち着くのです」と、ご自身の思いを正直ににこやかに伝えるとよいでしょう。
ケース(2)
肺炎とわかり、緊急入院。いつまで入院するのか見通しが立たず、気がかりだ
クリニックで処方された風邪薬を飲んでも発熱と咳が1週間治まらず、総合病院を受診したBさん(55歳)。検査の結果、肺炎と診断され、そのまま緊急入院することになりました。
同居の親や仕事のことが気がかりで医師に入院期間を尋ねても「今は何ともいえません」とはっきりしない答えが返ってくるばかり。
いつになったら退院できるのか、医師はどのタイミングで退院を決めるのか、どのように質問したら明快に答えてくれるのか――。先の見通しの立たないBさんはベッドの上で悶々と過ごしています。
【患者の心得】
平均的な入院日数を尋ねる。検査数値の目安を聞くのも手Bさんのような緊急入院の場合、医師は状況把握ができるまで入院期間を見通すことができません。今が急性期か回復期かによって、退院時期に差が出るからです。
それでは不安で仕方がないという場合は、同じような病状の患者さんの平均的な入院期間を質問すると、数日なのか数週間なのかおおよその目安がわかります。
入院中の検査は、主に回復の程度を調べる目的で行われます。容態が落ち着いてきたら「検査の数値がどれくらいになったら退院できそうですか」と具体的な目安を尋ねると医師も説明しやすく、患者さんも自分の状態を把握することができます。
ケース(3)
延命治療について聞かれ、驚いた
88歳の母親が脳梗塞の疑いで緊急入院することになったCさん。担当医にいきなり「延命治療はしますか」と聞かれ、驚くと同時に、返事に窮してしまいました。
【患者の心得】
迷ったら「治療を希望」と伝える万が一の急変を想定して心臓マッサージや人工呼吸器の使用について確認するのは、入院時の決まり事です。
どの程度の確率で起こりうる話なのかを確かめ、答えに迷う場合は「治すことを優先してください」と伝え、後でゆっくり話し合い、熟考する時間を持つのが安全な方法です。