【ロート製薬】若いミトコンドリアを注入して、細胞年齢を巻き戻す
ロート製薬 経営戦略推進本部 ディレクター R&D事業特任部長 基礎研究開発部部長
本間陽一さん製薬メーカーならではの再生医療技術を化粧品開発に
エイジングケア化粧品の進歩を牽引しているのが、再生医療における技術革新です。
再生医療技術による治療薬の開発に取り組む「ロート製薬」の本間陽一さんによると、「病気の治療は老化の予防と共通する点や関連する事項が多く、再生医療研究から得た成果には皮膚のエイジングケアに生かせたり応用できるものも多くあります。
その中でも特に化粧品との接点が多いのが、学会発表をしたミトコンドリアトランスファーの研究なのです」。
ミトコンドリアとは、抗加齢研究において注目を集める細胞内の小器官。生きるためのエネルギーを作る発電所のような存在です。
ミトコンドリアがダメージを受けて十分なエネルギーを作れなくなると代謝が低下して細胞全体が老い、皮膚細胞においてはエイジングサインに直結します。
「問題は、コラーゲンやエラスチンなどを生み出して肌の若々しさを保つ真皮の線維芽細胞の生まれ変わりのサイクルが遅いこと。その間に紫外線などのダメージをため込むと、ミトコンドリアの質も低下して、エイジングが加速してしまうのです」
資料提供/ロート製薬老いた皮膚細胞に若々しいエネルギーを注入する
そこで着目したのが、先述のミトコンドリアトランスファーです。
「細胞間でミトコンドリアを移送する現象で、ミトコンドリアがダメージを受けて弱った細胞に、健全なミトコンドリアが移動して、その弱った細胞を甦らせる現象です。
これを応用して老いた線維芽細胞に若々しいミトコンドリアを移動させれば、細胞年齢を巻き戻して、コラーゲン生成などの機能を回復させることも可能です」
まさに科学が生んだ若返りの秘策です。
「これまでのエイジングケアは、衰えた線維芽細胞の働きを活性化してコラーゲンなどの生成を高めようというもので、衰えた線維芽細胞では限界がありました。
それがミトコンドリアトランスファーが実現すれば、まず細胞のダメージをいたわり、若々しく健康な機能を回復させてから活性を促すことになります。その結果、より早く効率的にシワやたるみ等を改善でき、肌全体の質を向上させることができるのです」
ミトコンドリアトランスファーを促す成分を配合した化粧品も完成。最短4週でシワが改善する実証結果も得られています。
資料提供/ロート製薬 取材・文/近藤須雅子
「家庭画報」2018年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。