【特集】あの最高峰時計はなぜ愛されるのか? 家庭画報.comが最高峰時計ブランドの“愛される理由”を徹底分析。各ブランドから、歴史や性能を楽しめる「入門時計」、私のスタイルにフィットする「定番時計」、いつかは欲しい「夢時計」の3本をご紹介します。
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1780年、宝飾職人のマリ=エティエンヌ・ニトにより創業されたジュエラー、ショーメ。238年以上にわたり、パリのヴァンドーム広場12番地のアトリエで、ティアラをはじめとするジュエリーや時計など、数多くの名品を生み出しています。創業後まもなくして、ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの御用達ジュエラーとなったニトは、ヨーロッパの王侯貴族を顧客として人気を博しました。
皇后ジョゼフィーヌは、繊細さや優美さ、また情熱的な一面もある女性で、ショーメにとっての重要な顧客でした。1805年にショーメはジョゼフィーヌの公式ジュエラーとなり、彼女のためにパールやプレシャスストーンのついたジュエリーやティアラを幾つも制作。ジョゼフィーヌへの敬意を込めて作られた「ジョゼフィーヌ」コレクションがあります。ニトの後継者の中でも1900年頃に活躍したジョゼフ・ショーメは、自然界からインスピレーションを得た非凡なクリエイティビティによって、ベル・エポック時代の巨匠に。彼の創り出す“自然主義”のジュエリーは、森や草原の草花にインスピレーションを得た、写実的で優美な作品を数多く生み出し、芸術品の域に。そして、メゾンはいつしか彼の名である“ショーメ”と呼ばれるようになりました。
1840年のブレスレットのスケッチ。この時代はイタリア・ルネサンスと17世紀フランスの装飾美術からインスピレーションを得たロマンティック・スタイルのジュエリーを作っていました。このスケッチからも200年以上経っても色褪せない、ショーメの洗練されたクリエーションが垣間見られます。 ジュエラーならではの美しいタイムピース
ショーメは創業当時から時計も制作しており、1813年にはナポレオンのモノグラムをあしらった贈呈ウォッチを献上しました。巻き上げ式時計、触感時計、ジャンピングアワー、クロノグラフ、ミステリークロックなど次々と革新技術を取り入れた複雑機構時計や、ダイヤモンドや貴石のセッティング、ギョーシェ彫りやエナメル装飾などの細部までこだわった宝飾技術を生かしたジュエリーウォッチを発表。デザインはヴァンドーム広場にあるクリエーションスタジオで行い、時計製造はスイスにあるショーメのアトリエで行っており、すべてにスイスの一流マニュファクチュールで製造された高精度ムーブメントを搭載しています。パリのジュエラーならではの洗練されたスタイルとスイスの時計製造の技術が一体となった、美しいタイムピースを目指しています。
1925年頃、ジョゼフ・ショーメが制作したブレスレットウォッチ。この時代は舞踏会用の豪華なドレスにふさわしいジュエリーが盛んに作られ、時計もジュエリーとして考えられていました。様々なダイヤモンドのカットや精緻なセッティングが、当時のショーメの卓越した宝飾技術を証明しています。 表示価格はすべて税別です。 撮影/サトウアサ 取材・文/磯 由利子