愚直に真面目に考え、心模様を紡ぎ、丁寧に織りなす
クランクインの日、篠原さんや西島さん、スタッフを前に「デビュー作のような気持ちで、考えながら相談しながら撮っていきたいと思います」と挨拶した堤監督。これまで40本以上の映画を撮ってきた堤監督が今、「デビュー作のような気持ちで」と言う、その意味は……。
「この作品に関しては一つずつ愚直に真面目に考えていこう、と。そして、とにかく丁寧に。ほかの作品を簡単に作っているとは言わないし、そんなふうにはしてきませんでしたけど、とりわけこの作品においては、役者の心模様を作ることを主眼に、丁寧に織りなすと決めていました。デビュー作って、非常に緊張してセリフ一言一言の語尾や抑揚がどうとか考えながら、自分が納得できるように作っていくんですけれども、今回は篠原さんも西島さんもほぼほぼ皆さん、そのように向き合っていただいて、1カット1カット織りなしていったので、まさにデビュー作。第2のデビュー作と言っても過言ではないと思っています」
デビュー作だとする一方で、堤監督は本作を「自らの集大成」とも言います。
「例えば、光が心象に及ぼす影響も撮影部と相談しながら作り込むとか、この家はどの方向を向いていて、この時間は太陽がどこでどんなふうに室内が照らされるのかとか……。今まで培った映像作りのノウハウをフル動員していることも事実です」
役者の気持ち作りを考え、撮影は台本の順番どおりの順撮りで行われた。「ゆえにあのクライマックスを迎えられたのかなと思います」