今年は夏がとりわけ暑かったせいか、庭の柿の実が近年稀に見る大豊作でした。幼い頃、この柿の木の下でよく遊びました。今の家に越して来るとき、桜や枝垂れ梅の木と一緒にこの柿の木も移ってきました。40余年経った今年も、たわわに実った柿を見ると無事に穏やかな秋を迎えられた喜びに包まれます。
母が愛した結城紬に宿る面影
母の簞笥を開けると時間が止まったように母が愛した結城紬がひっそりと眠っています。一枚一枚を大切にたとう紙に納め、表には母の直筆できものの特徴が書かれています。
きものの色やカテゴリーだけでなく、中にはどなたからの形見分けかということも記されています。私はたとう紙を替える際に、その文字の部分をどうしても捨てられなく、そこだけ切り取って新しいものに貼り付けています。母の文字が宿るたとう紙を開き思い出を辿りながら、このきものにはどんな帯を合わせようかと考えている時間は、まさに秋の夜長にぴったりです。