おいしく、美しい独創の菓子 上生菓子というと、お茶人の好みに合わせて作る茶席の菓子を思い浮かべますが、髙家さんの菓子づくりはいたって柔軟。
茶事に限定せず、わらび餅はおつかいものの菓子として作り、クリスマスはもちろん、ハロウィンやバースデーケーキに代わる和菓子も製作しています。 とはいえ、あくまでも和菓子。
「口にするものですから、何よりもおいしいと喜んでもらうことを大事とし、目新しさより当たり前のことにこだわりたい」と。奇をてらった仕事はせず、京都の年中行事、花鳥風月を主題にしながら、菓子づくりに励んでいます。
そんな控えめな仕事から生まれた独特の意匠と色合わせは、地元の人たちもにも好まれています。髙家さんの手にかかると昔からの技法の品もどこか独創が感じられます。
例えば、生地を糸状に押し出しながら、あん玉に巻きつけて作るおだまききんとんや、羽二重のつばきも、品格を感じさせる美しさです。
クリスマスをテーマにした愛らしい和菓子「聖夜」430円今回は、茶席にもふさわしい素材使いと表現の、クリスマスのお菓子3種を作っていただきました。
そのひとつ「聖夜」はクリスマスツリーをかたどった、きんとん。清浄な雰囲気があり、空気を含んでふんわりとした口どけのいいきんとんを高く盛りつけ、金箔を飾ったちょっと大人っぽいツリーです。
「リース」380円「リース」は、メレンゲを加えて作った羽二重粉製。マシュマロのように柔らかくてきめ細かなもちであん玉を包み、緑のきんとんを真ん中に置き、赤と黄色の練り切りで作った飾り玉を添えるという、手数をかけた品です。
「ひいらぎ」380円「ひいらぎ」は、浮島という蒸し菓子です。スポンジ生地のようですが、あんをベースに卵や砂糖、上新粉を合わせた伝統的な和菓子。ケーキよりもきめが細かく、しっとりとして甘く、あん好きにはたまらないおいしさです。赤い実をあしらっただけなのに、ひいらぎに見えるから不思議です。
クリスマスが終わると、聚洸ではお正月用の菓子づくりが始まります。干支や松竹梅、鶴亀などを意匠にしたとりどりの吉祥菓子には、めでたさや晴やかさが一菓ごとに込められます。
季節や行事に心を寄せながら、自由な遊び心を持って作られる和菓子。小さな世界にいろいろな文化やおいしさが発見できます。
Information
聚洸
京都府京都市上京区大宮寺之内上ル3丁目筋違橋町
西村晶子/Shoko Nishimura
西村晶子/Shoko Nishimura
京都の老舗から新店まで、食を取り巻く文化などを独自の目線で取材。20数年、『家庭画報』の京都企画を担当し、さまざまな記事を執筆。
表示価格は税込みです。