環境農家への道 アトリエ「オーレリアンの庭」で知られる写真家で切り絵作家の今森光彦さん。理想とする里山を実現するべく、自ら農業従事者となり数年前に荒地を取得。その荒野を「オーレリアンの丘」と名付け、たくさんの蝶が集う美しい場所とすべく奔走する、今森光彦さんのエッセイです。
これまでの記事はこちら>> 落葉したウリハダカエ デが美しい絨毯をつくる。橙色から黄色に色づ くので、アトリエではたいせつな樹木。 今森光彦、環境農家への道
第21回 美しい土手をよみがえらせるために
(写真・文/今森光彦)
冷たい風が田園をわたってゆく。比良山の頂も急に白く輝きはじめた。こんなときでもアトリエの庭は、南に面しているので北風の影響を受けることが少なく、晴れると 暖かい。
季節行事になっている野焼きや焚き火には、もってこいの空間。ぱちぱちと音を立てる炎と遊ぶひとときは、何ものにも代えがたい。
毎年の恒例行事、庭の野焼き。宿根草は地上部を刈り取って、しばらく乾燥してから燃やすようにしている。香ばしい匂いに包まれるこの作業は、とても楽しい。開墾したばかりの農地は、地肌があらわになって荒野のような様相になった。でも、 自然の力はすごいもので、翌年からすさま じい勢いで、様々な種類の野草がはびこるようになった。
普通なら、雑草として敬遠されることうけあいだが、私の場合は大歓迎。野草たちが土地を潤してくれると思っ ているので、地面が生き返ったような喜びがある。 ただ私の場合は、野草の環境にはこだわ りがある。それは、草地と土手に分けて考えていること。
草地も土手も、漠然と見ている分には、何も変わりはない。一般の人 には、ただ草がたくさん生えているだけにしか見えないだろう。
しかし私にとっては、 まったく意味が違う。
雑木林やはさ木などの剪定も12月からはじまる。枝打ちした枝は、束ねて林床に置くこともあるし、焚き火に使うこともある。