環境農家への道 アトリエ「オーレリアンの庭」で知られる写真家で切り絵作家の今森光彦さん。理想とする里山を実現するべく、自ら農業従事者となり数年前に荒地を取得。その荒野を「オーレリアンの丘」と名付け、たくさんの蝶が集う美しい場所とすべく奔走する、今森光彦さんのエッセイです。
これまでの記事はこちら>> 開墾している農地にあった エノキの古木。今森光彦、環境農家への道
最終回 オーレリアンの丘で
(写真・文/今森光彦)
最後に言い忘れていたことがあ る。
それは、農地開墾のときに、ヤマザクラの古木とともに、私の前に姿を現してくれたエノキのことだ。
これも樹齢100年以上ある大木。この木に出会った時も私は歓喜して両手をあげてしまった。エノキは、今まで再々述べているとおりオオムラサキ、ゴマダラチョウ、ヒオドシチョウ、テングチョウなどを養ってくれる。
それと、金属色の輝きを放つタマムシも集まってくる。里山でもっとも重要な樹木のひとつだ。 大人の手の平ほどもある大型の蝶、 オオムラサキ。タテハチョウの仲間なので 体ががっしりとしていてたくましい。
今年の冬、エノキの幹元に吹き溜まった落ち葉の下では、冬越しするオオムラサキとゴマダラチョウの幼虫がたくさん見つかった。生命のゆりかごを心地よく揺らす、 それが、環境農家の仕事だと信じて、これからも歩んでゆきたい。
食樹であるエノキの幹元で落ち葉の 裏に隠れて幼虫の姿で越冬する。ちなみに、この光の田園をのぞむ小高い農地は、もともと地元の人たちに“丘”と呼ばれていたこともあり、“オーレリアン の丘(オーレリアン:ラテン語に由来する蝶を愛する人のこと)”と名付けようと思う。