数値目標はあえて設定せず継続できる行動目標を掲げる
関西医科大学附属病院健康科学センターの肥満外来の特色は、患者が主体的に減量に取り組めるよう認知行動療法をベースに減量指導を行っていることです。
管理栄養士による食事指導、健康運動指導士による運動指導のほか臨床心理士によるカウンセリングを取り入れ、三位一体のきめ細かなサポートを実施しています。
また、減量を行う際は、体重や腹囲などの数値目標をあえて設定しません。具体的な数値があると短期間で成果を得たくなり、挫折するリスクが高まるからです。その代わりに自分がやってみたいこと、続けられそうなことを行動目標として患者自身が設定します。
「人は主体的に決めて自分に合ったことは前向きに取り組めるという行動心理を利用しています。これも減量を成功に導くための秘訣です」と同センター長の木村 穣先生は狙いを説明します。
肥満外来では、患者が行動目標を設定するにあたり、食事と運動に関する問題点をそれぞれ3つ書き出してもらいます。
そして問題点のどの部分を変えればよいのか、あるいはどの部分なら変えられるのかということを検討し、行動目標に落とし込んでいきます。
“夕食の量が多い”のが問題なら“ご飯だけなら、今の半分くらいの量に減らせる”と自分ができることを考え、“夕食のご飯は150グラムにする”とできるだけ具体的な行動目標にするのです。
このとき、ポイントとして押さえておきたいのは、努力したら70~80パーセントの確率で達成できることを行動目標にすることです。
「達成が難しい目標ほど減量効果は高く、達成が簡単な目標ほど減量効果が低いという相関関係があるため、患者さんは高い効果を期待して難しい目標を設定しがちです。
しかし、減量の失敗体験が多い人ほど最初はハードルをかなり下げ、続けられる目標にすることが重要です」と木村先生はアドバイスします。