ハイクレア城に暮らす ドラマ『ダウントン・アビー』で一躍脚光を浴びた英国ハイクレア城。その城に今も住む第8代カナーヴォン伯爵家のライフスタイルを、英国フリーライター山形優子フットマンが取材。貴族の暮らしに息づく英国文化をご紹介します。
(今までの連載はこちら) 今回はクリスマス特別編! 3回にわたって、ハイクレア城のクリスマスストーリーをお届けします。
ハイクレア城のクリスマス
Vol.1 アドベントの始まり
冬の夜空に映える、神秘的なハイクレア城。魅惑的なハイクレア城のクリスマス
クリスマスまで、あと何日でしょうか。
キリストの誕生を祝う25日が来るのを待つ期間を「アドベント(待降節)」と言います。 アドベントの約4週間は、日曜日ごとにキャンドルに火をともし、静かに心の準備をするのが習わしです。
この頃になると、ハイクレア城には美しいモミの木が飾られます。朝、モミの木を満載したトラクターが到着。ドライブウェイ用に20本、前庭用に8本、そして玄関の両側用にも2本。
アドベント・キャンドルと呼ばれる4本のローソクは、25日前の4回ある日曜日を象徴。一番短いのが第1日曜日につけたもの。男性が数人がかりで、トラクターからクリスマスツリーを運ぶ。7mのクリスマスツリー
加えて、一番大切なのは『ダウントン・アビー』のクリスマスシーンでもおなじみ、吹き抜けのサロンに飾る高さ7m近くのモミの木です。
レディ・フィオーナは「去年は9mのが届き、仕方なく上のほうを剪定したの」と笑いました。あまりの高さに、はしごをかけてツリーを飾ります。
「年に1度、オーナメントを箱の中から一つひとつ取り出して飾りつけると、遠い子供時代の楽しかったクリスマスの思い出が蘇ってきます」とレディ・フィオーナ。
やがて城の中は、モミの木が発する「12月の香り」でいっぱいに。1年の終わりにふさわしい清らかな香りです。
ライトをつければクリスマスツリーの装いが完成。吹き抜けのサロンに設置した大きなツリーを、はしごを使って飾るスタッフ。デコレーションで館内をクリスマスムード一色に
クリスマスの飾り付けはモミの木だけではありません。
ドアにはリース、樫の木製の階段の手すりには、緑に赤い実をあしらったガーランドを巻きつけます。
「英国のクリスマス・デコレーションの歴史はヴィクトリア時代に始まりました。ハイクレアの飾り付けも、当時からの伝統を大切にしています」とレディ・フィオーナ。
緑は永遠を、赤い実はキリストの愛を象徴しています。